第18章 縁の時間
「んな事気にしなくてもいいって……いや、でも…良かった、なぁ……蝶が嬉しいなら、俺も嬉し…」
中也が言いかけた所で、コホン、と咳をする首領。
「……ごめんね、いいところでお邪魔して。…原因は恐らく、その…今日の行為で間違いはないだろう。ただ、それが原因なら…このスピードで卵子が出来て排卵にまで至っている事を考えると、もう一つの可能性も頭の中に入れておいた方がいいだろう」
『!もう一つの…?』
無いとは思うんだけれど、念のためにね、と苦笑する首領。
「…いや、今はよそう。恐らくない話だ、何よりも喜ぶべきは蝶ちゃんのお願いが一つ叶ったことだろうしね…………で、中原君?」
「は、はい!」
「色々聞きたいことはあるけどとりあえずそれは後にしておくとして…生理中は特にホルモンバランスが乱れて、女性は精神的に色々と過敏になってしまう時期なんだ」
蝶ちゃんに至ってはこれまで生きてきた中で初めての経験なのだから、特にだろう
首領の言葉に首を傾げる。
しかし中也は何かを知っているのか、真剣な表情で聞き始めた。
「それに、彼女は人生経験がある上に精神的に成熟していて大人な部分が多くありすぎるだろう?……だからこそ、今の思春期という時期に値するこの年齢の身体と、“合わない”部分が生じてくる」
元々不安定になりやすい時期の身体。
この年齢の身体…そう言われて、中也の顔が少しだけ曇ったような気がした。
「それで余計に気分が悪くなってしまう…ものだと思われる。大人の思考回路が出来上がった状態でホルモンバランスの取れていない不安定な身体では、相当葛藤する部分や困惑してしまうところが多いだろう………あんまり不安にさせてやらないであげなさい。つきっきりになるくらい、傍で見ていてあげなさい」
__大事な大事な成長の時期に、何年も一緒にいてあげられなかったのだから。
首領の言葉には色々な意味が込められていたのだと私は思う。
「!!…はい……」
『……中也さ…「中也」!…中也』
「…どうした?…怒ってないから、何でも言え」
私の方を向いて頭を撫でる中也。
本当だ、怒ってない…私の事が大好きな手だ。
『…えへへ……中也の独占成功したの…♪』
「…俺はいつでもお前の事で頭は埋まってるんだがなぁ〜?」
うりうり、と苦笑しながら撫でる中也に、自然とはにかんで笑顔になった。