第18章 縁の時間
『あ、あの…ま、まだ?……いい加減恥ずかし…い』
「なんでそんな恥ずかしがるんだよ…折角可愛い顔してんのに」
サラリと髪をといてからそれを耳にかけられて、思わずビクリと肩を揺らす。
それにこうやっていきなりそういうことを言うから…
「な、中原さんていつもあんな感じなんですかね…!?」
「あああ敦君僕に聞かないでくれるかなあ!?」
『っ…、そ、そればっかり言わな……んぐッ』
「ほら、クレープだけじゃなくてアイスまだ残ってんだろ。早く食わねえと」
柔らかく頭や頬を撫でながら、中也は私に食べさせる。
な、なんかこの触れられ方調子狂う…今までよりなんだか優しいのに、しっかりしてて中也の気持ちが伝わってくるというか。
少し擽ったいような、嬉しいような気持ちで、クレープどころかアイスまでもを食べさせられる。
「あーあー、まぁた中也が蝶ちゃんにセクハラしてるよ」
「セクハラじゃねえよ、合意の上だ…今気分良いから話しかけんな糞太宰」
「お、おおお公の場で何を…」
太宰さんと国木田さんも合流したようで、少し遠くから声が聞こえた。
そして顔を背けて言う国木田さんの言葉にハッとする。
本当だ、あれだけ人前でするような事は無かったのに…他のお客さんとか子供とかもいるといえばいるのに。
『………いいんですか、公共の場で』
「…食わせるくらいいいだろ別に。キスしてるわけじゃあるめ『!!?』は…っ!?おい、蝶!?どうした!!?」
キスと聞いて思わず顔から煙を出してショートした。
ち、違う違う、人前でするとかそういう意味で言ったんじゃない今のは。
『ち、ちちちち違っ……な、なんでもないです!!!』
「なんでもねえ奴の反応かよそれが!?」
「ほんっとに女心が分かってないね素敵帽子君って?」
「そうなんですよ乱歩さん、どうも頭の方までちびっ子なようで」
顔から火が出そうなほど熱くなった頬を両手でおさえると、中也が顔を覗き込んできた。
「お、おい蝶?落ち着け、大丈『きゃうぅ…っ♡♡』…幸せそうな顔してダウンしてんじゃねええええ!!!」
「あーあー、嬉しそうなのはよく伝わるけど聞こえてないねこれは」
中也に抱き着いて顔を埋めて熱を冷ます。
ダメだこれ、何これ、中也ってこんなに大人だったっけ。
んなに男の人だっけ…こんなに見れなくなるような人だっけ。