第18章 縁の時間
「全く…かき氷でも食うかい?それか…ああ、あんたプリンが好きなんだっけ?」
『かき氷にプリン…!!』
「あ、けどこの旅館、すっごい美味そうなジェラート屋が入ってたよ。なんならそこにでも行って買ってこようか?どうやら甘いもんなら食欲もあるらしいじゃないか」
私の火照った体をあらかた冷やしてからの与謝野先生の提案。
最初こそ食いついた私だったけれども、すぐにそんな気分もどこかに消えた。
『ああ…やっぱりいいです。……後で食べに行く予定なんで』
「後で…って、そうだったね。そりゃ邪魔しちゃいけない……けど、今頼んでおけば二倍食えるってのに…」
『…………一緒に食べる約束したから。ごめんなさい…』
「…そんじゃ、何かもう少し喉を通りやすそうな飲み物でも探してくるよ。ここあんた達の部屋だから慌てなくていいし……呼んでこようかい?素敵帽子」
ピクリと反応した。
勿論会いたい、今すぐにでも。
会って、もう一度しっかり謝って…ちゃんとギュッてしてあげたい。
それからまた今までみたいに…ううん、今までよりももっと…
『……折角の旅行なんで、中也さんは…中也さんの好きに動かせてあげて下さい。私の不注意でこうなっちゃっただけなんで……ほら、温泉気持ちよすぎてつい』
にへら、と笑いながら与謝野先生にそう返した。
勿論嘘なんて吐いてない。
けれど、今ここで我儘を通して……今度こそ本気で拒絶されたらと考えただけで、息がつまってしまうから。
中也さんが来れる時に…落ち着いた頃に……
なんて考えている内に、扉は開く。
「ほらほら、なあにしょげてるんだよ素敵帽子!」
「そうですよ中原さん、男は度胸です!蝶ちゃんしんどい時に一緒にいてあげなくてどうするんですか…って、第一発見者みたいなものな上に一番必死に探してたのに!」
「…何があったのか知らないけどさ、うちの蝶ちゃんの一番の栄養剤が何故だか全く理解はできないが君なのだから?仕方なくだけれど?蝶ちゃんのためだから行ってもらわないと困るのだよ…ねっ!」
「ッて!!?……っめぇら、今度会ったら覚え…て……ッ!!」
太宰さんに足蹴にされるように無理矢理入らされた彼。
目が合った瞬間に、呼吸が止まったような気がした。
何…言われる?
何を……___
「____ッ、目ぇ覚めたか!!?」
『…っ?……へ…ッ?』