第18章 縁の時間
「____!!」
『ん………ッ?』
「!!目ェ覚めたかい!?何してんだよあんたあんな所で!!?」
『?……よさのせんせ…?』
寝ていたのかなんなのか…身体が怠くて喋りづらい。
どころかなんだか息苦しいし、何より酷いのは頭痛だろうか。
頭がガンガンする…
「あんた、大浴場の中で湯船に入ったまま気を失っていたんだよ!!?部屋に蝶がいないって旅館中探し回って、挙句の果てには女湯にまで入ろうとして止めるのにも必死だったんだか『女湯…?』…あ、ああそうか、あんたは今起きたから知らないんだね。外に出て戻ったら部屋にもどこにも蝶がいないって…えらい顔して走り回ってたよ」
外に出て戻ったら。
部屋にもどこにも。
そんなキーワードが並べられれば、いくらぼうっとしたこの頭でも理解が出来る。
だけどさっきの今でそんな事、信じられなくて…何より、今までと変わらないその様子に、不謹慎だけど心の底から嬉しくなって。
良かったって、まだ見捨てられてなんてなかったんだって。
頭の中でなんとなく想像はついていたけど、確かな証拠が欲しくてつい口にした。
『だ、れが…ですか……?』
「……あんたの、旦那」
『…………そ、うですか…』
旦那さんかぁ…まだ、そう言ってくれるかなあ、中也さんは。
それに女湯に入ってまで捜索しようとしたなんて……そんなに動揺してたのかな。
「?どうしたんだいその反応は……ってそうか、のぼせ過ぎてる上に脱水症状まで引き起こしてるからね。これ、とりあえず飲み物だけ持ってきてもらったんだ…ゆっくり飲みな」
『……今あんまり何も口にしたくな「いいから飲みな」…………ッ!?…ッぁ…っ、は……ッ』
「!!」
少しだけ。
それも経験から、ゆっくりと水を口に含んだのに。
それは喉を通ろうとした瞬間に強い吐き気を催させ、結局水は口の端から流れてしまい、暫く咳き込むこととなった。
与謝野先生に背中をさすられながら、ケホ、ケホ、と咳を繰り返す。
『………ごめ、なさい…っ…今、やっぱり……ッケホ、…っ』
「…水できついかい……あんたね、湯船に浸かって失神して…今回は大丈夫だったから良かったものの、あれで顔をお湯にでも付けててみな?…子供に戻っちまうところだったんだよ」
『!…はい……ごめんなさい…』
「分かってちゃんとこれから気を付けるんならいい」