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第18章 縁の時間


「うんうん、よく言えました♪ほら与謝野さん、意地悪してないで戻ってきなよ」

「お?乱歩さんがそんな事するの、珍しいじゃないか」

「敦君もだよ〜、今からそっちに蝶ちゃん返すから」

『へ!?返……ッ!!』

女医と人虎が移動し始めるのと同時に、名探偵が何かを蝶に耳打ちした。
それに顔を真っ赤にさせて、蝶はこちらに歩いてくる。

は?え、あの蝶が素直に言うこと聞くとか…は!?

ますます分からねえ、あの名探偵。

「ち、蝶?帰ってき…」

『中也さん…は、その…………っ…蝶以外の人も撫でちゃうの?』

「は…?……えっ、おい蝶、お前まさかさっきの『蝶じゃない人に触られても抵抗しないのに、蝶が触ったら抵抗しちゃうの?』ッ!?ちょっ、ちょっと待て蝶!ここ公共の場だから……っ!」

唐突に俺に手を伸ばした蝶に、咄嗟に慌てて言葉で制した。
いきなり来る上に相手がお前だとこっちは余裕も何もねえんだよ…!

『…他の子が触っても……与謝野先生が触っても、拒否しなかったくせに』

「!……お前なぁ…ほら、こっち座れ」

自分の隣…窓側の席に座るよう促すと、蝶はピク、とそこを見る。
そしてそのままそこに座り、ちゃんと俺も手袋を外して蝶の頬に触れる。

「……好きな奴に触れられんのは、ドキドキするから慌てちまうんだよ…あとあんま公共の場では、な?…今回は特別」

『ッ!…!?…ン……ゥ、ッ…!?♡』

上着で死角を作り、触れるだけの短いキスをして頭を撫でた。
こういうところは学習しねえ…俺が素手で触れる相手がどれだけ特別なもんか、考えてみりゃあお前ならすぐに分かるだろうに。

それでも妬いちまうくれえに俺の事が愛しいのは、まあ分かってやれなくもないのだが。

「…まだ欲しい?」

『!!…い、いいです………ッ』

「いい加減覚えろ、俺の場合はここまでがセットだって」

『うぅ…ッ……』

キュ、と俺の上着を握って羞恥に耐える蝶。
この表情は俺にしか見えてはいないだろう…やはりいい表情だ。

「おや、本当に仲直りしてしまった…」

「だから言っただろう、とっとと二人の世界に浸らせてやれば機嫌もすぐなおるって…本当、名探偵がいないと溜め込むんだからあの子は」

「そういや乱歩さん、さっき蝶になんて耳打ちしてたんだい?」

「彼の弱点だよ…ちょっと背中を押して素直にしてやっただけさ」
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