第18章 縁の時間
「兄妹?あいつはんな事一言も…それに兄なら太宰の野郎や谷崎あたりが近ぇんじゃ……」
「おや、じゃあ何だろうね…?……乱歩さんは妾達が知らないようなところまであの子のことを理解してるようだから、正直言うとそれを知らなけりゃ分からないんだよ、あの二人のことは…太宰でも知らないようなことを知ってる様子だしねぇ」
「!…それは……蝶が話したからか?」
「いいや?乱歩さんが自分で勝手に閃いただけさ。まだあの子がうちに来たばかりの時にね…乱歩さんが一人であの子の事手懐けちゃってて、寧ろ太宰が一番驚いていたくらいだよ」
あの太宰が驚く…?
そんな事が…
チラリとまた蝶の様子を見る。
いいように餌付けされてるようにしか見えねえのだが…やはり感じるそこの繋がり。
関係性を疑っているだとかそのような事は無いのだが。
『乱歩さん乱歩さん、じゃあ次これ!』
「んん、中々お目が高い!それはこの中でも僕の一押しの…えっ、食べるのかい?……食べちゃうの?」
『………美味しそ「好きなだけ食べな!!僕は大人だからな、いくらでもまたあげるよ蝶ちゃん!!」本当!?』
「……あんな風に敬語が抜けるのもよくある光景さ。あの乱歩さんがあそこまで渋ったお菓子を人にあげるっていうのもかなり変な話だが…なんせ仲がいいんだよあの二人。本当、いったい何があったのかねえ」
妬くような類のものでない事は確かだが…どうもどこか引っかかる。
あの蝶が…それも実験施設から出てきたばかりの時に、見ず知らずだった赤の他人にそこまで懐くようなことが普通あるか?
それも太宰がいたのに、だぞ?
おかしいにも程があるだろ、何者だあの名探偵…
あいつはいったい、蝶の何を知っている……?
「本当に仲がいいねえ二人共…乱歩さんはなんでそんなに蝶ちゃんの扱いが上手いのかなぁ」
「ふふ、それは僕が天才だからだよ!名探偵に不可能はないのさ!因みにいくら聞かれても答えないところは答えないからな!」
『…乱歩さんにはなんでもバレちゃうからなぁ……』
「ん〜?今蝶ちゃんが素敵帽子君にヤキモチ妬いてることとか?」
名探偵のまさかの一言に思わず聞いてないフリを装った。
目の前では女医が笑いを堪えている始末…え、嘘だろいつだよ妬いたって。
『妬いてないですよ』
「ほらほら遠慮しないの。甘える時は?」
『………甘える…』