第18章 縁の時間
「よ、与謝野先生?その…やめといた方がいいんじゃ……」
「蝶相手ならやりやすいもんだろ、あの子はこいつに構って欲しかっただけなんだから」
女医の発言と今の状況にギョッとして、慌てて蝶の方に目をやる。
しかし蝶はこちらに見向きもせずに会話をしているようだった。
「…そういうなら、その手離してもらっても「ダメだね、面白くなくなるだろう?」何のつもりだよ手前…」
「ふふっ……___妬いてる蝶は、可愛いだろう?」
「!!…悪趣味な女だ、それも俺と少し感性が似てやがる。けどまあ、俺は体に触れられんのが嫌いな質でな…蝶に良くしてくれてる奴だろうから下手な事は出来ねえが、そろそろ離さねえと俺もあんまり我慢出来ねえぞ」
「え?けど蝶ちゃんいつもくっついてませんでした?」
人虎の言葉に俺も女医も目を点にした。
…こいつ、天然か。
「ああ、敦…あんたも大人になればいつかわかる日がくるさ」
「太宰の野郎だけは見習うなよ」
「えっ、は、はい!……って中原さん何して…」
「あ?…!ああ、悪い…癖だから気にすんな」
思わず撫でていた手を引っ込めた。
何してんだ俺は…まあ確かにこういう天然さを見ると蝶を見てるみてえで無意識にしちまうのかもしれねえけど。
手袋してなかったら寒気でもしてたかもしれねえなこれは。
『………乱歩さん、その袋何ですか?』
「んん?これはねえ…お菓子とジュース♪蝶ちゃんいる??」
『いいんですか!?やったあ♪いただきます!』
あっちはあっちでえらい喜びようだ。
そんなに普通の菓子も好きだったのかあいつ、それならまた今度家に置いておいてやるか、なんて考えて。
目に付いたのは、可愛がるようによしよしと蝶を撫でる名探偵の姿。
いや、スキンシップなんだろうが…なんというか、距離も近いしあの二人はなんだかよく分からない関係な気がするし。
何よりも、そりゃあ俺のポジションだろう…そんな考えが頭を過ぎった。
「……なあ、蝶とお宅んところの名探偵はよ…ありゃ一体どういう関係だ?やけにじゃれてるっつうか……変に他より親しくねえか?」
「え?乱歩さんと……ってああ、確かにそれ僕も思ってました。お菓子なんて絶対人に渡さないような乱歩さんなのに、蝶ちゃんにだけは何かと…」
「………あの二人はまあ、あれさ。所謂兄妹みたいなもんだ、仲がいいだけだよ」