第18章 縁の時間
「まあ、それにしても腰が痛いならどこかに連れ回すってのも野暮な話だもんな…」
『……いいよ、一人で出かけてき「やだよ、つまんねえだろ」…何それ』
「お前いねえのに一人でぶらついたところで俺は楽しくもなんともねえんだよ、察しろ」
最近は俺も蝶の扱い方がまた少し上手くなってきたと思う。
こいつに気を使わせねえように、俺が自分の意思を貫き通せば…言い方を変えれば俺のわがままを言ってしまえば、何も気負わせる事なく話が進められる。
『なんか上手く言いくるめられてる感…ねえ、本当に無いの?したい事とか…折角二人共お休みの日なんだよ?』
「明日もあるから全然いいさ………ああ、でも確かにこんな休みが二日も続く事なんか珍しいな…思いきって旅行にでも行くか」
『へ?……旅行…?……旅行!?えっ、いきなり過ぎじゃ「いい旅館があるんだよ、上手い料理食ってゆっくり温泉にでも…どうだ?」温泉…』
少し分かりづらいが、明らかに目が輝き出したこの少女。
たまにの遠出くらい良いだろ、それにこういう事はまだしてやれてなかったし。
いよいよ少し親らしいことをしてやれるんじゃねえのかこれは?
「露天風呂付きの部屋もあるし、それ以外にも大浴場もなかなかのもんだ。ここから結構な遠出になるが…」
『い、行く!温泉!!』
「…お前温泉そんなに好きなのか……?」
『温泉なんて日本文化!行かなきゃ損!!』
ああそっか、こいつそもそも日本人じゃあなかったもんな。
どういう国で生まれたのかはこことはまた違った世界の生まれだからよく分からないが…
「あんまり行ったことねえの?」
『!な、何回かはある…けど、中也さんみたいな人と一緒に行くの久しぶり…』
「……そうか。よし、とっとと準備して行くか…車と新幹線、どっちが『新幹線…!』早ぇな」
『し、新幹線なら中也さん手が空くから……いっぱい構ってもらえるかなぁって…』
おい聞いたか今の、天使がいるぞここに。
大天使蝶さん…もう俺昇天できるわ今ここで。
「……」
『あれ…っ?ち、中也さん?……中也!?ちょっ、息して息!なんか止まってるから!!かっこいいけど!!』
「あ、悪い少し邪念が…よし準備だな準備」
すぐさま持ち物を用意して鞄に詰めていく。
まあ本当のお楽しみは今夜なわけなのだが……たいがい悪い大人だな、俺も。