第18章 縁の時間
『今日ね、懐かしい夢見たんだ〜』
「!…夢?」
朝食中、久しぶりに聞く蝶の夢の話。
俺自身もみていただけあって、妙に気になってしまった。
『うん!作之助と太宰さんに撫で撫でしてもらっ「…」……嘘だって、ごめんって、ちゃんと中也の夢だって』
やってくれる。
ふざけられるようになったのはいいとして…俺の目の前で織田の事呼び捨てにするとか、あの青鯖野郎の名前出すとか有り得ねえだろ。
多分ある種の悪戯なんだろうが、こういうところは本当に太宰そっくりだ。
嫌いじゃないがな、こいつの場合は。
「いつの夢見たんだよ?お前がそういう夢見る時って、意外と何か起こったり分かったりする時多いだろ?」
『……中也が私のこと助けに来てくれた時の♪連れ去るけど悪く思うなよーって』
「ぶっ…!!!」
今度こそ吹き出した。
セリフのチョイスに動揺したからではない。
いや、それも少しはあるかもしれないが…それより問題なのは、全く同じ夢を同じタイミングでみていたということ。
こんな偶然があるか?
それも内容が内容だ…ただの偶然か?本当に…
「そ、そうか…蝶?どうした?」
『!う、ううんなんでも!…ち、中也はさ…私を初めて見つけた時に…がっかりした?探してた人じゃなくて…探してたような、“大人の女の人”じゃなくって』
「あ?いきなり何を…いや、前にも言ったがな?俺はそもそもあの時お前を見つけた時段階で既にお前に惚れて………確かに戸惑いはしたが、俺より小せえ奴の方が可愛がりやすいしいいんじゃねえの?今たまたまにせよ、学校にだって通えてるわけだし」
『…本当に?』
「嘘つく必要がどこにあんだよ。それにその年のうちに経験しとかなくちゃいけねえこともいっぱいあるし、俺もそれを通じて楽しんでるお前を見んのが好きだしな」
何やらまた身体のことを気にし始める蝶を安心させようと、思ったままの事をそのまま言葉にする。
嘘なんかつく必要もなければ、ついたところで蝶には分かる。
それに、本当にこれで良かったと思ってる。
蝶の事を考えても、俺の今のこの充実感を考えてもだ。
四年間離れている間に殺されていなくて良かったとは思うが、特に大人の姿を求めることなんて俺はない。
ただ、蝶が笑って生きてくれれば…こいつが幸せであるならば、それで。
『…そっかぁ、やっぱり優しいね』
「お前限定な」