第18章 縁の時間
____その日は雨が降っていた。
自分の力で、何かを成し遂げたいとこんなにも強く思ったのは初めてで…駆け出した足を止めることなく、立ち向かったあの時の高揚感をまだ覚えている。
色々なシステムをくぐり抜けて、襲われる度に対抗して。
耳を劈くようなアラートや、破壊した機械から迸る電流なんかもまだ鮮明に覚えている。
それほどまでに、十四の頃の世間を知らないただの餓鬼だった俺には初めての衝動だったんだ。
「……ッ、こいつ…っ!?おい!心臓部にだけは近寄らせ…__!?」
心臓部、そう聞こえてすぐに、女を閉じ込める檻のことであると察知する。
だから相手の背後に回り込んで、システムの情報を吐かせたのだ。
「手前…心臓部が壊れれば、檻が開くんだな?」
「!!誰がそんなことを言うと…ッく……」
「……じゃああれか。壊されると困るっつうことは…そういう事だな?」
あの女の利益になる…それはこいつらにとって死んでも避けたいものなはず。
逃げ出されるかもしれないから……すぐにその答えは頭の中に思い浮かんだ。
「あの女を助けたいのなら言う通りに____っ…」
すぐにとどめを刺してから、すぐにシステムの心臓部に手をかけた。
力いっぱいにそいつを壊して、システムが壊れて止まったのを確認する。
機械の中から怪しげな液体が漏れ出すのを踏みつけて、その心臓部から繋がるチューブを辿っていけば、すぐに目に止まったそこ。
一際目を引くほどシンプルなデザインの扉を蹴破って中に入ると、中からは眩いほどの光が差してきて…目がそれに慣れた頃には、檻……水槽の中に、思い浮かべていた女。
ではなく、そいつと瓜二つな綺麗な綺麗な少女が入っていた。
一瞬で目を…否、心を奪われた。
あの女と同じとか、違うとか、そんなことはもうどうでもよくて。
しかし、俺の存在に気が付いたのか、少女は目を見開いて怯え始める。
来るなと言うようにこちらを見る少女。
そんな様子に動揺しつつも、少女に怪我が無いように異能を使って檻を蹴破る。
ガラスの破片が水流によって押し出され、重力下に体がさらされて倒れ込む少女を抱え上げる。
「…今から手前を連れ去る。悪く思うなよ」
優しげも思いやりもねえ言葉。
それに目を丸くした少女に問われ、変わったばかりの声で名乗った。
「俺は中原。横浜のポートマフィアの、中原中也だ」