第12章 夏の思い出
トウェインさんの言葉に、皆そこまで考えてはいなかったのか知らされていなかったのか、目を見開いて私を見る。
「傷口塞ぐのだって時間かかって…僕は連絡入って何回か医務室にまで通してもらったくらいだったけど、それだけでも危ないなんて十分伝わった」
『…殺られてないし。いざとなったらどうとでも』
「する前に意識途切れちゃったんでしょ」
また核心を突かれて、返せなくなる。
この人は私がどうすれば対処できるのか知ってるから、そこまで分かってるんだ。
本物の馬鹿じゃあない…それに私の事、よく知ってる。
「中原君は何回か抜いただけって言ってただろうけど、彼を止める方が大変だったんだから。血だけは蝶ちゃん回復するの時間かかるし、何より危険なんだから…役に立てるかは分からないけどさ、せめてこっちにいる間くらいいいじゃんか」
『………ダメ、そういう事なら絶対…ただでさえ、普通に過ごしててああなるんだから。トウェインさんだけでも近くにいない方がいいんだよ。中也さんいない時には出来るだけ私に近寄らない方が「僕なら遠方の相手にでも対応出来る」ダメだって…』
顔を俯かせて絶対にダメだと首を振る。
今でだって立原や広津さんに迷惑かけて…それを差し引いても地味な上に危険な役を任せてる。
それに、迷惑だなんていうようなレベルの話じゃないんだこれは。
「なんで」
『…っ、いいからもうあんまりこの件で私のとこにいようとしないで』
お願いだから。
ずつとずっと、想像してしまうおぞましい“もしも”が頭を埋め尽くしてしまうから。
「ここには殺せんせーだっているし、何より僕の異能があれば遠くの敵だって補足できる。知ってるでしょ?中原君がつけない時の方が多いんだし、利用できるものは利用して?」
『利用とか言わないで…トウェインさんにはもう十分色々力を貸してもらってるから。お願い、近くにいるのだけは……』
「…烏間さん、ちょっと教室借りるね!授業中途半端になっちゃったけどごめん、また来る!!」
『!?ちょっ…』
トウェインさんに横抱きにされ、走って校舎まで連れて行かれる。
突然の浮遊感に思わず動けなくなった。
「あ、ああ!ありがとう!!」
「…………危なかった?」
「出血酷かったのは聞いてたけど…」
ざわめく皆の声は、校舎に入ると聞こえなくなった。
着いた先は保健室だった。