第12章 夏の思い出
「…とりあえず、折角いい講師が来てくれているわけだ。訓練の方に集中をだな……気持ちは分かるが」
「いやいや烏間先生、あれ普通に気になるって。先生さっきから見てんじゃんやっぱり」
「白石さんもよく出来るよね、あんな射撃。律以上のかのうせいあるし…さっきから警戒してるはずなのにちょこちょこ殺せんせー触手削られてるし」
「白石さんの射撃術は私でもまだ計測しきれていない部分もある程です。それに戦略も頭の回転も並のものじゃない……しかも白石さんは貧血の影響で、まだ一歩もあの場から動いていません」
少し遠くから皆の声が聞こえる気がする。
気がするだけだ、今は銃声を聞いている。
手に持つこれは、銃なんて名前がついているだけで、最早私の体の一部なのだから。
呼吸やリズムを合わせて、ただただ体を操作する。
そこから放たれる弾丸も、私の体の一部に過ぎない。
ギリギリ射程圏内にいてくれてる殺せんせーを撃ち続けていると、段々再生するのにエネルギーを使い始めたのだろうか。
『…殺せんせー、動き鈍くなってきてません?』
「し、白石さんの銃撃が増す一方で…先生ちょっと疲れました。もうかれこれ三十分は再生し続けてますから」
『じゃ、そろそろ終わらせましょうか。ちゃんともらっていきますよ…!』
ラストスパートだと言わんばかりに射撃を再開する。
フェイクの弾や途中で軌道を変える撃ち方…様々なテクニックを応用させて、機械ではまだ出来ないような精密な射撃を繰り返す。
全く同じ軌道の弾を用意して律のやっていた連撃を、私は二発の弾でなく五発の弾で行う。
「ニュ!!?弾数が増え…っ!!」
先程まで三発だった上に疲弊している今の殺せんせーには、それだけで混乱させるには十分なものだったようだ。
人数がいないから、南の島で皆が実行したような、錯乱させるための当たらない攻撃はあまり使えない…ただしあまり使えないだけで、上手く工夫して行動範囲を狭め、囲っていけば…
「あ、あれ!!!」
「マジで…!!?」
「!!あんな事が__」
宣言通り殺しはせず、最後の最後で少し手を抜いた。
あまりやりすぎても皆のモチベーションが下がってしまうかもしれないし。
「………白石さん、この数の触手の破壊…先生も一度しか経験したことがありません」
「____たった一人で、触手を七本も破壊するとは…」