第12章 夏の思い出
「いやいやいや、銃二丁でどうやったら四本同時破壊とか…しかも相手は殺せんせーだよ…!?」
『銃自体は私が設計してたものだから』
「それもビックリだけどその腕前なんなの本当?」
『やだなぁ、愛の力は偉大なのよ?カルマ君』
銃をホルスターに戻して微笑むと、何故かカルマ君は冷や汗を流してこちらを見る。
最近こういう表情よくするようになったなぁ…スキルが育っていってる証拠だ。
殺せんせーが言った通り、誰にも経験や殺気を感じ取らせないようにするのはある意味一番至難の技。
私自身そういう気配には敏感だから、自分を騙せるくらいになるよう抑え込む時だってある。
ある意味そういうのは一番怖い。
それを分かってる顔だ、これは。
「なんて従順な飼い猫な事……愛強すぎ」
『カルマ君も珍しく訓練に顔出してる事だし、お師匠さんもたまにはいいとこ見せないとね』
「!…あっれえ?俺の事なんて考えてくれちゃうんだ蝶ちゃん。お弟子さんにも優しいんだね?」
『私がカルマ君の事考えないわけないでしょ』
カルマ君はなぜか目を丸くして、そこから割り込んできたトウェインさんに僕は!!?と必死に聞かれる。
そうまでして聞きたいかこの人は。
『たまにはトウェインさんも考えてるよ』
「彼と扱いの差ありすぎない!?」
『トウェインさんは立原二号だから』
クスクス笑っていると反論されかけはしたものの、何も言えなくなったのか勢いがピタリと止まった。
本当そっくり、面白すぎる。
それにトウェインさんとカルマ君とは、そもそも単純に比較できるような対象じゃあない。
人前だからあまり言いはしないけれど、カルマ君はやっぱり一番気の許せる親友だと思ってるし…トウェインさんは友達って感じじゃあないしなぁ。
立原も立原で、一応友達なはずなんだけど、それとは別に立原っていうジャンルが出来てしまったというか……
「ははっ、相手が悪かったねトウェインさん!」
「蝶ちゃんが強すぎるだけなんだよ!!」
『うん、やっぱりあれだ、世話焼きポジション』
一言で表すならそうなるな、うん。
「僕が世話焼きとか」
『あと普段アレだけど実はかなりいい人』
「……ええ!?いい人!?いい人なのぼ『だからジャンルは立原』立原君と今度やけ飲みしてこようかな」
忙しい彼のテンションに笑えば、授業開始のチャイムが鳴った。