第12章 夏の思い出
「トウェインさんって結構凄かったんだ、アレなのに」
「本当。アレなのにまさかこんなに射撃の腕があっただなんて…」
カルマ君のわざとらしい言い方に続けて、本当に尊敬したのであろう速水ちゃんが続けた。
『トウェインさんは確かにアレだけど、狙撃は凄いよ。アレだけど』
「さっきからなんなの!?嬉しくないんだけど!!!」
一時間の体育が終わり、皆してトウェインさんに目を向ける。
いや、でも本当に凄い。
教え方も的確だし、何より私が言いたかったところ全部言って回ってくれたり…見る所が同じだった。
それにやはりというかなんというか、世話焼きなんだよなぁこの人。
「しかも結局殺せんせーとやら来ないし!蝶ちゃんの銃捌き見たいんだけど僕!!」
『仕方ないでしょ、先生今ベルギーまでワッフル食べに行ってるんだから。三時前のおやつ』
「前じゃん!!三時にもなってないじゃん!!」
『文句言わないの。しかたないでしょ、いい的が無いんだし』
私の言ういい的とは、撃つのに少々手こずるようなもののことである。
正直に言ってしまえばそんなものは無いに等しいのだけれど、ここで用意できるものじゃあマフィアの拠点でやった方がまだ楽しい。
言い換えれば、やりごたえが無いとも言う。
「あー、確かに。蝶ちゃんが訓練なんてここで始めちゃったら、的全部無くなっちゃいそう」
『塵になるまで粉砕するのに一日もかからないと思うよ』
「「「あの子怖い」」」
勿論対先生用BB弾での話だ。
実弾なんて訓練で使えないから仕方ないのだけれど…私からしてみれば目視できる的なんて、大きさ関係なく、全てが等しく的なのだ。
そこにあるから撃てば壊れる、ただそれだけのもの。
殺せんせーレベルの的なんて普通ないし、あの人が来てくれるかどうかも分からない部分があるのだけれど…
『…………三本…いや、やるならやっぱり五本か』
「随分とやる気だね蝶ちゃん、能力使わずにマッハ二十に挑むんだって?今までの時間にしなかったの?」
『授業中の発砲は禁止。あと休み時間はまだ身体怠かったから』
木陰で座ってホルスターから銃を取り、相変わらず惚れ惚れしてしまう程に大切な自分の銃を見つめて口元を緩める。
「中原君照れ屋だからまたどっか行っちゃったしなぁ……銃見てるだけで幸せそう」
『飼い主さんには褒めて欲しいものだから』