第12章 夏の思い出
『トマト…ううっ、なんで今日こんなにこっち見てくるのこの子……』
「あのー…蝶ちゃん?トマト嫌いなら僕が食べよっか?」
トウェインさんの言葉にパアアッと顔を輝かせるも、中也さんがトウェインさんの頭に容赦なく手刀を落とす。
「いッッ!!!?…っ君!!蝶ちゃん以外だと本当に弱くしないよね!!?」
「阿呆、甘やかしてんじゃねえよそこで。少しくらい仕方ねえとは思いもするが、好き嫌いは直させた方がいい」
「すっごい親やってるよね中原君て!!いいじゃんトマトくらい!寧ろ蝶ちゃん嫌いなもの少ない方だよ!!?」
「どうすんだよ、もしこの先野菜がトマトしか無くなるような時代に突入したら」
中也さんのまさかの発想に、トウェインさんまでもが成程と真剣に納得し始める。
え、待ってよ、何なのトマトしか無くなるような時代って。
そんなの全力で阻止するよ、絶対させないし、あらゆる手を尽くしてこの世界に貢献するよ。
私が。
……でもどうしよう、本気でそんな事になったら。
『…………と、まとばっかり…?』
「ああ、そうだ。トマトばっかりだ」
『や、だ…っ、トマト嫌……』
「だから今の内に食えるようにだな……って待て、お前なんでマジで泣きかけてんだ、冗談に決まってんだろ!?」
寧ろトマトに対する恐怖心だけが煽られた。
憎たらしいほどに可愛らしい見た目のこの小さな赤い実が酷く恐ろしい。
こんなものだけの世界…になるなんて事も有り得なくはない。
「あーあ、蝶ちゃん泣かせちゃった。どんまい中原パパ、多分その辺うちのボスの方が上手だね」
「ああ!?手前こいつのトマト嫌い舐めてんだろ、なんなら試しにどうにかしてみせろよ!?」
分かったよ、そこはプロに聞いてみよう
言ってからトウェインさんは電話をかけ始める。
相手は本当にフランシスさんらしく、すぐに通話は繋がって、スピーカーにされてどうしたと声が響いた。
「ねえボス、嫌いな食べ物ってどうやって克服させる?」
「いきなり何を言い出すんだね君は?嫌いなものだなんて慣れるか他に少し色々と用意してそれを食べること自体を好きにさせるか…というかトウェイン君、どうしてわざわざ電話でそのような事を?切っても___」
「蝶ちゃんがトマト食べるの苦手なんだってさ」
「ミス白石はそこにいるな、安心しろ。簡単に食べられるようになるぞ」