第12章 夏の思い出
中也さんの体に背中を預けて、トウェインさんのお土産を食べていく。
まんべんなく栄養の取れそうな内容だけれど、駅弁ならではの美味しさが詰まってる。
『…』
「食ってる時は静かだよな、仕方ねえけど」
私に合わせて少し食べやすい量のものにしてくれたのだろうか。
普通の量の駅弁なら見ただけでも橋が止まってしまいそうな量なのだけれど、トウェインさんの買ってきてくれたものは普段私が自分で詰めてる量より少し多いくらいのものだった。
ありがたい…のだけれど、やはり途中からキツくなる。
「うーん、ちょっと多かったかな」
『!ううん、食べれる。美味しいもん…ありがとう』
無理をするほどの量というわけでもない。
中也さんが食べさせる量で少し慣れていたからか、まだマシだ。
「ああもう本当いい子…ッ、無理して詰め込まなくてもいいんだからね!?」
「馬鹿言え、こんくらいの量食わせてなかったらこいつ倒れんぞ。無理してでも詰め込ませる」
「いいこと言ってるはずなのに鬼のような発言にしか聞こえないのは言ってるのが中原君だからかな」
「何だと手前…」
中也さんの言うことは最もで、量が必要…というよりは、ちゃんと栄養をとろうと思ったら必然的に最低限の量は食べなければならなくなってしまうのだ。
食べれるようになっただけ嬉しいこと。
無理をしてでもと言いつつも、私が戻しそうになるような程の無理はさせないし、時間をかけてでもゆっくりと待ってくれる。
食事に手をつけていなかった頃が懐かしく感じた。
しかしそんな風に思いつつもゆっくりと箸を進めている中、ピタリと一瞬それが止まる。
少し考えてから問題のものを箸でつまんで、角の方に移動させ___
「こら、トマト退けんな」
『…ちょっと移動させただけだもん』
「お前それそのまま無かったことにする気だったろ」
「え、何?もしかして蝶ちゃんプチトマト嫌いな『嫌いじゃないし、苦手なだけだし』とりあえず嫌だってことだけは伝わったよ、うん」
中也さんの目は誤魔化せなかった。
恐らく最初に入っているのを見つけた段階で、既にそこをマークしていたんだろう。
そうとしか思えない。
『……中也さん、トマ「食わねえぞ」まだ言い切ってないのに…っ』
「朝の分は食ってやったろ、一個ぐらい食え。俺が作る時でもあんま入れねえようにしてやってんだから」