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第12章 夏の思い出


『膝カックンとかなんて可愛……じゃなくて!え!?さっきまで気配も感じなかったのにいったいどこに!?』

トウェインさんはびっくりした〜…と立ち上がって、中也さんの方を呆然と見る。

「あ?…まあ、ちょっと野暮用だ野暮用。異能使って全力で戻ってきた」

『異能って、また変なところで……椚ヶ丘で、わざわざ?』

「ちょっとな…ん、これ」

中也さんに小さな袋を無理矢理押し付けるように渡された。

『え、な、何ですかいきな「いいから貰っとけっつの」そんな無理矢理な……箱?』

袋の中に入っているのが箱だと気付き、何なのだろうとそれを取り出す。

「ちょっと、さっき蝶ちゃんすっごい心配してたんだよ!?」

「俺は元気だっつの、手前が蝶にベタベタしてやがる方が心配だ…ちょっと面貸せ」

「え、何、君から面貸せとか怖いんだけど?」

いいから来いっつってんだよと襟元を引っ張られ、ゆっくりと中也さんに教室の扉まで連れていかれるトウェインさん。

『ち、中也さん?トウェインさんお土産…というかお見舞い持ってきてくれて……』

「ああ、分かってる。とりあえず俺はこいつと話があるからちょっと席外すわ…手前、人のに軽々しく触ってやがったんだ。覚悟は出来てんだろうな?ああ?」

「ま、待ってよ、あれ普通に誤解で……え、中原君!?ちょっ____」

無理矢理、音もなく外に連れ出されたトウェインさん。
クラス中がぽかんとしていて、入口を見つめるばかりだった。

「え…と、とりあえず蝶、何もらったのよそれ?開けてみたらいいんじゃない?」

イリーナ先生がこちらに歩いてきて、小さな箱に目を向ける。

『は、はい…なんか恐れ多いんでちょっとだけ……隙間から見るくらいにしときます』

「「「出たよ乙女」」」

少し箱を開けてみて、中を自分だけで覗き込む。
最初は何だかよく分からなかったのだけれど、三分の一程度まで開けたところで光が中にまで届いて、中に何が入っていたのか…どんなものが渡されたのか、ちゃんとはっきり見てとれた。

それを自分の頭で認識して、すぐに静かに箱を閉じ、机にゆっくりと置く。

それと同時に、ポロポロと両目から涙が溢れてきた。

「!?ち、蝶!?何、どうしたのよ!?」

『…っ、だ、って……ッ、ちょっと、外出てきます!!!』

「蝶ちゃん!!?」

中也さんに、会わなくちゃ…
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