第12章 夏の思い出
「死なずに生きてたって…」
『うん、まあ立てるようになるくらいまでは確かちゃんと育ててもらえてたと思うんだけどね?私こんな見た目だし、日本生まれじゃないにしてもおかしな見た目の子供だったし…変な能力持ってるし』
体質の方は関係ない。
しかし私がこの体質になる以前から、こんな能力は持っていた。
コントロールの効かない私の能力は非常に厄介なもので、有事の際に発動してしまったはずだったのだけれど、人からは忌み嫌われた。
『殺したら殺したで自分が呪われるかもしれないだとか怖がられて、結局自分から逃げ出して…そこからまた色々あって、途中でまたろくでもないところで監禁状態。中也さんが来てくれるまで長かったなぁ……』
皆に話してある分ではほんの数年間。
だけど私からしてみればそんなものじゃあなかった。
実験期間だけでも、どれ程の月日だっただろうか…思い出したくもない。
『だからとても胸を張って言えるようなことじゃないんだけど、正直言って家族とかどうだっていいし興味もない…ただ、産んで変な能力持たせて、そんな育て方をしてくれた事には感謝してる』
「感謝って…なんでまたそんな……?」
カルマ君に恐る恐る聞かれた。
普通に考えたらありえない話だもん、仕方ない。
だけど確かに感謝してる…あの時点で私が“一度本当に死んでいなかったら”、この体質は手に入っていなかったかもしれないのだから。
六歳になったばかりの日…雨の降っていたあの日、そしてたまたま日本のあの世界のあの街にいたあの時に死んでいなかったら、きっとこうなってはいなかった。
『生まれたところが所謂普通の家庭ってやつだったとしたら、私は外に出て行って監禁されることもなかっただろうし…中也さんに会えなかったもの』
「……成程。白石さん、御両親のお顔は覚えているんですか?」
『それが、どうやっても思い出せないんですよね。まあ多分、そもそも覚えてすらなかったんだと思います。お母さんとかお父さんとか、呼んだことすらありませんし』
皆からしてみれば想像もしていなかった話なのだろう。
特別隠そうとしていたわけでもないのだけれど、私自身の考え方が変わるまでは人になんて話せなかった。
中也さんの考え方を聞いていなかったら、思い出したくもなかった。
白石澪が生まれる前…一番最初の少女の話。
名前はなんといっただろうか…