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第12章 夏の思い出


いよいよ殺せんせーに仕掛けようと思っていた朝のホームルーム……だったのだけれど、そこで私はある事に気が付いた。
中也さんは外に行ってしまったため、いつもと同じ授業風景になるはずだったのだが。

『先生』

「はい、白石さん。どうされました?」

『聞いていいことなのか分かりませんけど……その、竹林君は?』

口にした途端に教室の雰囲気が重くなる。
十中八九聞かない方がよかったことだろうが、私にだって聞く権利くらいはあるはずだろう。

朝から見ていないとは思っていたのだけれど、授業が始まってもここにはいないのだから。

「竹林君は、二学期からA組へ移籍となりました…本人の意思だそうで」

殺せんせーが言うと、どこかから感じ悪かったよな、成績伸びたのだって殺せんせーのおかげみてえなもんなのに、と口々に聞こえ始めた。

カルマ君に聞くと、何やら始業式に全校生徒の前でスピーチを読まされたのだとか。

しかしそれと同時に家庭環境も少し複雑らしく、皆も強くは言いきれない部分があったらしい。

『A組に行かなきゃ家族に認められない、ねぇ……ここにいた方がよっぽどこの先伸びると思うけどなぁ』

「!というと…?」

『殺せんせーの授業って普通じゃ有り得ないくらいに分かりやすいですし………それに正直、私はあんまり家族の事とか言われたところで分からないんで』

そういえば中原さんも育ての親だもんな、などと声が聞こえる。
元々の親の事って覚えてるのとふと誰かに言われた気がして顔を上げると、皆こちらに顔を向けていた。

元々の親…私の最初の生みの親。
肉親か、言ってもいいものかどうか……

『あるにはあるけど…聞いててあんまり気持ちのいい話じゃないと思うよ?』

それなら遠慮しておくと誰か一人でも言うと思ったのに、そんな言葉は上がらなかった。
皆、やっぱり気にもなるし知りたいんだろう、ただでさえ隠してる事が多い身だし…

それに、何気に中也さんも多分屋根の上から聞いてるし。

『そうだねえ、どれなら話せそうかな…私を生んだ肉親ね。所謂お母さんとお父さんだけど、私は正直言ってその人達の事を家族だなんて思った事は一度もなかったよ』

「「「!!!」」」

『家の中でまともに眠れた記憶もない。居場所も何も、そもそも人として扱われた事なんてなかったから…今思えばよく死なずに生きてたなぁ……』
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