第12章 夏の思い出
「あれ、何?」
「多分中原さん…世紀末みてぇな顔してっけど、多分」
「顔も何も完全に落ち込んでるよねあれ、どうしたんだろ」
教室でいろんな子から大丈夫かとか無事でよかったとか声をかけてもらえ、それに返していって落ち着いてきた頃。
立原と広津さんは流石にずっと付き合わせているのも悪いため、椚ヶ丘で色々回っててもらうことに。
そして問題の中也さんはというと…
「俺はダメだ…蝶が家出する、死ぬ」
「あれ本当にどうしたの蝶ちゃん。何?家出するなんて言ったの?」
『一言も言ってないよ、放っといていいと思う』
カルマ君にてきとうに返せば、カルマ君にも周りにも苦笑いで返された。
教室の隅で完全に落ち込んでる中也さんだけれど、私は悪くない。
『女の子の頭鷲掴みにして、思いっきり力入れるだなんて大人気ない事する人、知らないもの』
「ぐっ…!!?」
「「「あ、したんだ」」」
中也さんの方を見ると相当ショックを受けている様子。
こういう冗談には弱いよなぁこの人。
『こういう反応するから親バカだって言うのに』
「くそっ、否定出来ねえのが悔し……親バカじゃねえっつの!!」
『じゃあ一々うじうじしないでください』
「お前が立原と寝るだなんて言い始めるから『冗談に決まってるじゃないですか、馬鹿なんですか』お前拗ねたら本気でするだろうが!!?」
話の概要を把握したのか、皆して中也さんに哀れみの目線を向け始めた。
『拗ねてないし。第一寝るんなら…そうだなぁ、女の子かカルマ君辺りかな』
「待って、なんで俺巻き込まれてんのそこ」
『今度お泊まり来たらそれでもいいよ』
「いや、それ本当に俺セコムに殺され……そうだねえ、なんなら今日うちに泊まりに来る?中也さん放っておいてさ」
何故だか突然そんな事を言い始めたカルマ君に皆してそちらをバッと振り向いた。
『それもいいかもねぇ、ナイスアイデア。なんならこのまま横浜帰らないで椚ヶ丘に「すみません蝶さん、頼みますから家出だけは…!!」冗談なのに』
「白石、中原さんで遊んでやるなって」
「見てて流石に可哀想になってきたよ」
「つかカルマと息ぴったりすぎんだろ、師弟コンビ恐ろしいわ。絶対敵に回したくねえ」
遊ぶも何も、中也さんがこの調子だからなぁ…
『何か言いたい事は』
「愛してます、愛して下さい」
『…合格』