第12章 夏の思い出
「あっれ、もしかして蝶ちゃん照れてる?」
『照れてないし、ちょっと恥ずかしいだけだし』
「「「それを照れてるって言うんだよ」」」
フイ、とカルマ君から目を背ける。
中也さんが馬鹿な事言うから恥ずかしくなっただけだもん。
そんな馬鹿な中也さんはといえば…何ともまあ楽しそうな笑みに切り替えてこちらに寄ってきて……ってあれ、なんかやばい気がする。
何がとは言わないけれど身の危険を感じて中也さんを恐る恐る見た。
「へえ、照れ屋は相変わらずだなァ?」
『ちゅ、うやさん…っ、やだなあ、だから照れてるんじゃなくって恥ずかしいだけで……ひゃ、ッ』
プニプニとほっぺたをいじられ始めた。
どういう状況だこれは、なんかすっごい恥ずかしくなってきた。
「お前結構柔けぇよな、食っていい?」
『食べ!!?何言ってんですかいきなり!!ていうかここ学校だか…っ、らぁ……!!』
ググ、と中也さんの腕を押すものの効果はなし。
知ってた、勝てないなんて事。
それに更に悔しくなって口を真一文字に引っ張ると、更に楽しそうにプニプニといじられる。
「あー面白ぇ…授業は流石に邪魔しねえけど、書類作成しながら見てっからな。くれぐれも体育に参加したり、こっそり俺の目を盗んでトレーニングしねえように」
『し、しませんよそんな!なんでそんな怪しんで「んじゃ、カバンとペンケースにこっそり仕込んでやがる重り全部出せ」な、なんでバレて……っ』
あっさりと出される大量の重り。
バレないと思ってたのに、ペンケースの方のものまで見抜かれていた。
『き、筋トレ…せめてリハビリ代わりに筋トレだけでも……!!』
「いやいや蝶ちゃん、流石に大人しくしときなってば」
『こうやって私のこと弱くしていくんだ中也さんの馬鹿あぁ…!!!』
「お前マジで今日だけでも大人しくしてろって。こないだも俺の助言無視して目の前で舌火傷したばっかりだろが」
つかちゃんと元気になってからした方が効率いいだろ
中也さんに諭されるも、無残に没収された重りちゃんたちがこちらを見ている…気がする。
飛んだり走ったりしないのに。
『……ぱ、パワーはいるよ…?』
「お前にそれ以上パワーつけてどうするってんだよ」
『で、でも力は必要で…』
「…そっちは俺の専門だろ、そこまで目指す必要ねえよ。後方支援を任せてんだから」