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第12章 夏の思い出


「ところで白石さん、一つ話…というか提案があるんだが」

浅野さんの提案なるものに何ですか?と素直に聞く。
優しく微笑んでから、浅野さんはその提案とやらを口にした。

「中原さんも来られるということで丁度いいんじゃないかと思ってね…高校進学の提案だ。どうかな、君の実力があれば外部試験からでも入学式出来るだろうし、椚ヶ丘高校に進学してみては」

「!!」

『高校進学…?私が、ですか……?』

突然の提案に、中也さんの方を向くことも出来なかった。
予想もしていなかった話だ、高校だなんて。

「君の進路の話を殺せんせーも烏間さんも心配していてね。探偵社にそのまま残るにしても、様々な可能性があるのにそれを潰してしまうというのは勿体ない話だ…探偵社の方に聞いてみても、そういう話はやはりされた」

『…高校なんて、そんな話……』

された事なんか一度もなかった。
私の中では、今年が最初で最後の学校生活だと思っていたから。

この中学を卒業したら、そのまま探偵社でまた今までのように働くものだって…それしか頭になかったから。

「私自身もそう思う。だから、もし少しでも興味があるのなら考えていてくれるとありがたい。椚ヶ丘高校なら私の管轄でもあるし、君の入学を歓迎する」

『………い、今は少し頭が整理出来てないので…受験の季節になるまで考え、ます。…でも、やっぱり戸籍の件もありますからそんな無茶な事は……』

浅野さんは、戸籍だなんて事は全く考えていないといった目をしていた。
良くも悪くも教育馬鹿だと、誰かに聞いたことはあった。
こういう事か…まっすぐに人を見てくれる。

それが私には一番嬉しい…進学の話なんかを持ちかけられて、断る理由なんかどこにもない。

「では、進路相談の時期まで待つことにするよ。無理にとは言わないが、しておいて損は無いだろう…学業に限らずとも、友人というものにこだわるのもよし、部活動なんかをしてみてもよし。どんな小さな事でも、したいという気持ちがあるのなら大事にしなければいけないよ」

『!……は、い…ありがとう、ございます』

「ゆっくりでいいから、考えていてくれ。いい返事が貰えると私も嬉しい…では、お大事に」

中原さんもお元気で、という言葉に、俺の方からも本当にありがとうございますと中也さんは返す。

____なんという人だ、なんて真っ直ぐな人なんだ。
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