第12章 夏の思い出
「すみません中原さん、うちのもまだまだ子供なもので」
「い、いや。こっちこそ取り乱してつい…」
中也さんにクスリと笑ってしまって、クスクスと笑う。
すると中也さんの方から後で覚えとけよというような目を向けられて、浅野さんからは微笑ましいといったような目で微笑まれた。
「それで具合の方は?銃で撃たれたと聞きましたが」
『撃たれた方よりも出血の方が問題になって…なんとか元気になりました、御見舞までわざわざありがとうございます』
「おい、言っておくがお前まだ元気じゃねえからな。自力で歩けもしねえくせして調子のんな」
でも中也さんがおんぶしてくれるでしょ?とニッコリとすれば、中也さんは片手で顔を覆って耳をほんのり赤くさせた。
こいつマジで覚えとけ…と呟かれた気はしたけれど、中也さんが可愛かったので満足だ。
そんな時、ふと彼がちょくちょく呟いていた言葉を思い出して、ついつい口に出してしまった。
そうか、これがそういう事。
『中也さん天使』
「お前本当に黙れってクレープ買ってやるから…!!」
『いくつ?「一つ」せめて三つ「分かったよ三つな!!!」やった♪』
本当に仲がよろしいようだ、交際されたと知った時は驚きましたが…本当に微笑ましかったです。
浅野さんの妙に引っかかる口振りに、どういう事です?と首を傾げる。
すると、ああ、ご存知なかったですか?と話し始めた。
「中原さんの告白…というかプロポーズのご様子は、殺せんせーから動画で生中継されていましたから。私と後、烏間さんとイリーナさんは存じ上げてますよ」
「は…っ、え……」
『え、そんな事!!?その動画私持ってないのに!!』
「待て蝶、そこじゃねえよそこじゃ。他にもっと突っ込まなくちゃならねえところが「それなら今日の夕方にでも添付メールを」『本当ですか!?ありがとうございます浅野さん!!!』聞けよせめて…!!!」
頭を抱える中也さんを無視して浅野さんと盛り上がる。
なんていい人、と別方向にも好感度が急上昇した。
そういえばこの人、私に対しては本校舎で過ごさないかって一回しか言ってこなかったな、なんてふと思った。
皆はもっと何かあったらしつこいってよく言っているけれど、やっぱり本当はそんな事はないんじゃないかな。
私の戸籍の話を知ってる人…その上でこの学校に居場所を作ってくれた人だ。