第12章 夏の思い出
『?貴方は…?』
「!そうか、自己紹介が遅れて申し訳ないね。僕は浅野学秀…生徒会長を務めている者だ。君は本校舎の方でも有名でね」
E組にいるには惜しい人材だ、と浅野君は、何故だか浅野さんの方をちらりと見た。
この二人、雰囲気がそっくり…そうか、この子が噂の息子さんだ。
立原と広津さんは外で待機し、中也さんは中に入る。
すると浅野君が何故だか私の目の前に膝をついて右手をとり、指にそのまま口付けた。
『…………へっ!!?』
「んなッ…!?」
「おや」
浅野さんまでもが驚いたような反応をする。
思わず固まって動けなくなっていれば、中也さんが無理矢理浅野君から私の手を取った。
そして片手をググ、と振り上げて今にも殴りかかりそうに…って待て待て、これは拙い。
「手前、うちの蝶にいきなり何を!?」
『ち、ちち中也さん落ち着いて!!手出しちゃダメ!!』
「お前よくそんな冷静でいれんなおい!?一発くらい『したら一ヶ月は口聞かないから!!』…」
無理矢理手を下ろした中也さんにホッと胸をなで下ろす。
焦った、これで浅野君が殴られでもしてたらと考えると…ああ恐ろしい。
『ごめんね浅野君、でももういきなりああいうのは…』
「すまないね、あまりにも君が美しかったものでつい……これでもかなり抑えはした。本当ならばその唇にしてしまいたかったとこ「手前マジで殺されてえかこのマセ餓鬼が」…やめておいて正解だったようだ」
『う、うん…びっくりしちゃうからもうしないでね…?』
「……理事長から聞いていた通りだ、どうだい?A組に移籍して、どうせなら僕とお付き合いでも『先約がいます、ごめんなさい!!!』それは驚いた」
全力でお断りしておいた。
何なんだ、糸成君といいトウェインさんといい浅野君といい…男の人ってこういうのが流行ってるの?
中也さんなんかこの言葉を言ってくれるまでどれだけかかったことか…
ちらりと中也さんの方を向くと、何故だか泣きそうな顔をして一人でガッツポーズをしていた。
「成程、そこの方と?」
『!…よく分かったね。保護者にしか見えなかったでしょ』
「いやいや、雰囲気を見ればすぐにそうかなと思ったよ。からかってしまって申し訳ない…では僕はこの辺で。また会おう、白石さん」
『は、はい…じゃあ』
失礼しましたと言ってから、浅野君は出て行った。