第12章 夏の思い出
「よくこんな時間からこんなもんばっか食えるよな」
『立原のくせに気が利くね、立原のくせに』
「おい、持ってきた残りの飴全部持ち帰ってやってもいいんだぞ」
『いいよ、そしたら立原の髪の毛この場で刈り上げるから』
勝てねえわ…とがっくり項垂れられた。
中也さんと入れ替わって入ってきた立原は、なんと気が利く事に、りんご飴とぶどう飴を持ってきてくれていたのだ。
中也さんから意識が戻ったと連絡が入って、ここに来る前に思い立って持ってきてくれたらしい。
『よく分かってるねえ立原君、私の助手に指名しよう』
「何のだよ、俺探偵じゃねえんだが」
『……じゃあ召使い?』
「お前絶対そっちが本命だろ」
何のことやらと惚けながらもりんご飴を食べ進める。
いい具合に冷やされているから、心なしか昨日より美味しい気さえした。
これならいくらでも食べていられるな、なんて言いながら三本目に突入する。
「これ、普通食うのにかなり時間がかかるはずなんだが?」
『ケーキ食べるよりかかってるよ。本当ならもっとぱくぱくいきたいところ』
でも飴を割るのも勿体ないため、ちゃんと舐めながら堪能する。
袋に入れて持ってきてるのにわざわざ保冷剤で冷やして持ってこられていて、変に気の利きすぎてる今日の立原に機嫌を良くした。
そんなところに、首領に話しにいった中也さんが戻ってくる。
「戻った。やっぱりお前自身にあんま歩かせたりしねえならいいって……立原、お前なんてもんを…」
「な、中原さん!!すんません、食いてえかなと思ってつい…」
「いや、いい。寧ろよくやった」
何故だか親指を立てる中也さんに首を傾げながらも、ありがたくりんご飴を堪能した。
制服に着替えて、中也さんの車で椚ヶ丘まで送られる。
まさかの立原と広津さんまでもがついてくるという事態にまで発展してしまい、本当に保護者の付き添いというような形になってしまった。
久しぶりに本校舎にお邪魔してから、理事長室へと足を伸ばす。
まだ生徒も少ない時間帯。
どうぞと言われて扉を開くと、中にはこんな時間なのに、一人の生徒が立っていた。
『失礼します、白石です…』
「中原さんから話は伺っている。どうぞ皆さん中へ……ああ、こっちは気にしないで下さって結構ですよ」
「……!君が、白石蝶さんか」
中にいた男の子が私を呼んだ。