第12章 夏の思い出
『ン…っ、ンン、ぅ……』
チュ、とリップ音を立てながら、何度も何度もされるキス。
我慢してたけどそろそろ恥ずかしいのも限界に近付いてきて、その上唇が触れ合う度にゾクリとした刺激が身体に走り始めるようになってきた。
「…いい顔してる」
『ぁ…ッ、……な、んでいきなり…』
「いっぱいしてやるって約束してたからな…お前には暫く無理させられねえし、その分こっちで補給させろ」
フニ、と唇を指でなぞられて、中也さんの言わんとすることを本能的に理解した。
私個人としては嬉しいような恥ずかしすぎるような…寧ろ今までよりも恥ずかしいような。
なんとも言えない心地になって頬を紅潮させ、絶え絶えになった息を整える。
『……キス鬼』
「お前もなんかあったらしてくんだろが」
『中也さんのせい…』
「俺にさせたくならせるお前が悪い」
理不尽な、と心から思った。
けど嫌な感じはしないし、正直に言うとちょっと嬉しく思ってる部分があるのも否めない。
けれどもただただ恥ずかしい。
『…学校、今日から行っちゃダメ?』
無理矢理話題を変えようと顔を背けながら口にする。
「フラついてる奴が何言ってんだよ、立てもしねえくせして無理すんなって」
『でも、もう二日も休んで…あ、浅野さんに顔見せにだけでも……』
何気に皆と会ったら、やっぱり一緒にいたくなっちゃったし。
特にカルマ君なんかは、散々心配させちゃってるし。
お見舞いのお礼だけでも、ちらっと様子見るだけでも、なんて次々に頭の中に思い浮かんでくる。
「………保護者の付き添い付きなら許してやる。ただし車椅子使う事…E組の方の校舎にも行くんなら俺に背負われる事。いいな」
『!…うん、いい!!』
「よし、んじゃとっとと残り食っちまって着替えて行くぞ。今朝だから、急いで行けばギリギリ最初の授業にも間に合う」
体育は禁止な、と言われて仕方なくはいと答えておいた。
どうせ中也さんの監視付きでさせてくれないくせに。
「俺はとりあえず首領に伝えてくる…後許可取ってくるわ」
『……すぐ戻ってくる?』
「出来るだけな。…医務室の入口に今は立原もいるが、入ってきてもらっとくか?それなら待っとけるだろ」
『ん…立原いるなら待っとく』
クシャリと頭を撫でられて、中也さんは出て行く。
大人しくご飯の最後の一口を食べきった。