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第12章 夏の思い出


『も、もうお粥いい…』

「もういいってお前、他もまだもうちょい残ってんだろ。第一お前用にちょっと少なめに作られてんだからこれくらいは食え」

『これで少なめとかありえない、絶対中也さん用の量でしょこ……ッ、…』

言い切る前に無理矢理レンゲを口に突っ込まれた。
そして無理矢理大人しくさせられた私に一言。

「んじゃ、実は普段からこっそり退けようとしてやがるこのプチトマト食ったら許してやるよ」

『!!?……ん、っ…な、んでバレて…!!』

「分かるわそんくらい、お前生のプチトマト嫌いだからわざわざドライトマト作って料理に混ぜたりしてんだろ」

俺がたまにわざと乗せてたらすっげえ食うの躊躇ってるもんな

面白がるように中也さんは言う。
あのプチッてなっていきなり中身が出てくる食感が、なんだか小豆に似てて苦手…見抜かれてた上にわざと乗せられてたらしい。
なんといういじめだ、今度サラダの上に大量にパセリ乗せてやる。

我ながら小さい事を目論みつつも、プチトマトには勝てなくて無理矢理お粥を口に含んでいった。

「つっても不思議なもんだよな、ドライトマトは好物なくせして生の方は嫌いとか」

『嫌いなんじゃなくて苦手なんです』

「……あ?食いてえってか?口移しで食わせてやってもいいんだぞ、ほら」

ヘタを摘んでこちらに向けられ、唇に付けられたため嫌々と首を振った。
するとため息を一つ吐いてから、仕方ねえなと離され、それをそのまま中也さんは自分で食べる。

…………待て、食べた?
なんでその関節キスじみた食べ方を…わざと!?わざとなのもしかして!!?

またしてやったり顔で美味かったよと笑われて、バッと後ろを向いた。

何なのこの人、意地悪してくるくせに何でこんな顔するの。
かっこよすぎてドキドキする…私ばっかりドキドキさせられてる。

トマトでそんな事するとか馬鹿じゃないのこの人、そんな風にするんだったら直接私にしてくれれば…

そこまで考えて気が付いた。
何を考えている私、鬼に上手いようにキス好きにさせられてるんじゃない、正気に戻るのよ蝶…!!

「……おい、まだ残ってんの食わねえのかよ。トマト食ってやったんだから勿論食うよな?」

『!!た、食べます食べます!お粥だけならちゃんと…ッ~~~!!!』

振り向いて食べようとしたら、今度こそキスされた。
確信犯だこの人…!
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