第12章 夏の思い出
そうでもなけりゃお前にこんなモニター付けねえだろ、と生体情報モニターを指さされる。
どの段階で傷が塞がれたのかは分からないのだけれど、相当な量の血が無くなったのは確か…自分が一番よく分かってる。
本当に危なかったんだ、全然嫌な夢も見てなかったから、そんな実感なかった。
『……死にかけてた?』
「まあ、健康な人間の数値ではなかったな」
『…二日って、もう学校始まってるじゃない』
「ああ、理事長から見舞いに花とか贈られてきてるぞ。あの人もかなり心配してたみてえだし、早く調子戻すためにもちゃんと食え…食事はもう頼んであるから後少ししたら来るだろ」
携帯を見せられ、いつの間にか連絡されていたのだと知った。
近くの棚の上に花瓶が置かれていて、そこには綺麗な花がいくつも飾られている。
浅野さん、こういう事をするような人には正直言ってあまり見えないのに…もしかしたら素の部分なんかは、やっぱり優しい人なのかもしれない。
『ご飯…食べれるかな。二日抜いてたらあんまり自信ない』
「食いきったらデザートもあるらしいぞ」
『……あんまり食べる気しないなぁ。なんていうか、ご飯抜いてたら…ごめんなさい、なんでもない』
「消化にいいもんにしてくれるだろうし、とにかく食え。じゃねえとあしたからも食えなくなんだろ」
謝んな、ちゃんと分かってる
頭に置かれる大きな手が暖かかった。
そこまで言ってくれなくたっていいのに、優しくされるから調子が狂う。
なんでいつも荒い性格のくせして、ちゃんと優しくしちゃうのかな。
「ああ、なんなら先にあの大量のりんご飴から消費するか?一応全部食べれるよう保存させてあるし、冷えた状態のが食えると思うぞ」
『!食べる…!!』
「果物なら体にもいいだろうしな…よし、んじゃ一個だけ飯食う前に食わしてやる。ちょっと待って…………おい、本来なら食わすなって言われるとこなんだが」
『……中也さんいなくなるならいらない』
りんご飴より俺ですか、と赤くなりながら椅子に座り直してくれた。
「…他に何か気に入った食いもんでも見つかったか?」
『全部美味しかったよ。チョコバナナとか冷凍フルーツとか、やっぱり綿あめとか』
「そうか、それなら良かった…また秋か冬にでも改めてどっか行こう。結局勝負も着いてなかったし」
『!!うん、行く!』