第12章 夏の思い出
はだけた浴衣の内側には下着しか着けておらず、隠そうとしたのに中也さんは私の両腕を動かせないよう掴んで止める。
馬鹿力…
「いつ気付くかと思ったんだが、気付かずゼリーまで食い始めるとは…流石蝶さん、やる事が違ぇな」
『や……っ、見ないでッ』
「俺以外には見せてねえから安心しろ。それにしてもいい眺めだな…お前もしかして下着のサイズちゃんと合わせたのか?今ちゃんと収まりきって『言わないで中也さんの変態ッッ!!!早く手離してよ!!!』はは、無理なお願いだなそりゃ。諦めろ」
身をよじっても腕を離してもらえないし、そっちを見てるのかと思いきや楽しそうに私の顔しか見てない。
ある意味一番の変態だ、私の反応見て楽しんでるこの人。
『ね、ぇ……っ、お願ッ…』
「……んじゃ離してやるけど隠すなよ」
スッと手を離され、腕が解放される。
それに合わせてすぐさま浴衣に手を持っていきはしたものの、何故だか中也さんの言葉に逆らえず、隠せなかった。
『…い、つまで……?』
「ずっとだ、ずっと。今回はお前の方から離れていこうとしやがったからな、その仕置き」
『!……はぁい…』
それを引き合いに出されるのなら、仕方がない。
行き場を失った両手を、前を隠さないように無理矢理力ませて大人しくさせる。
これ位しておかなくちゃ、隠しちゃうから。
「………やっぱり阿呆だろお前。そういう事すっからいじめ甲斐があるってまだ気付かねえの」
『へ…ッ、?』
中也さんの方から何故だか浴衣に手をかけられて、そのまま前を閉められた。
腕から力が抜けると同時に、呆然と中也さんの方を向く。
「風邪ひいたらいけねえのにんな事本気で言うかよ、俺が」
『…怒って、ない……?』
「怒ってねえって。そもそもそうなった原因も俺にあるようなもんだろ、その辺本当に馬鹿だよなお前」
ぽかんとしてから、思わず背もたれから離れて中也さんの方に抱き着こうと動いた…ものの、やはり体にうまく力は入らないし、しんどすぎてあえなく撃沈。
ポス、と背もたれに身を預けて少し呼吸を整える。
どれだけ血がなくなったんだ今回、こんなに酷いこと滅多にないのに。
「…やっぱりこっち来たいか?」
『行きたい…』
「んじゃ、ちゃんと飯食えたら俺の方から行ってやるよ。お前二日は意識なかったんだからちゃんと食えよ」
『え…二日?』