第12章 夏の思い出
私が乱歩さんの意見を知る前に男の人だと断定した時点で、信憑性に拍車がかかる。
「後で回収しておいた銃を見てもらってもいいか。多分お前が一番この組織じゃ銃には詳しいはずだから」
『分かった…ていうかそれなら、後なんて言わずに今からでも……っ、ぁ…ッ』
今からと言って中也さんの腕が緩み、上体を起こすと頭に激痛が走ってクラリとした。
耐えきれなくなって倒れこもうとする前に中也さんから無理矢理抱き寄せられ、それに抗うことも出来ずに中也さんにもたれかかる。
『ハ……、ハァ…』
「阿呆、そうなるから後でっつったんだよ。お前さっきまでの俺より貧血なんだから相当キツいはずだろ、もう暫くちゃんと休んでろ、一緒にいるから」
『ん…』
「ここまで弱ってっと流石に素直だなお前も。今なら鉄分飲ませ放題か?」
中也さんの声に半泣きになって首をふるふると横に振れば、いらねえの?と目を丸くされる。
そして腰に回した腕を離してごそごそしはじめ、私の目の前にあるものを差し出した。
「今ならゼリーが付いてく『い、いる!!!』食いつき早ぇなおい」
ちょっとベッド動かすぞ、とリクライニング式のベッドを操作して、背もたれに少し角度をつける。
中也さんはもう元気だからかサプリを準備し始めて、ゼリーを開けてスプーンに少し乗せる。
「ほら、口開けろ」
『…じ、自分で食べれ「なら水で飲むんだな」お、鬼……ッ』
どうすんだよとしてやったり顔をされ、遠慮がちに小さく口を開く。
そしたらちゃんとそこにゼリーを運んでくれて、意地悪なしに食べさせてくれた。
「おーおー、美味そうな顔してくれるぜ本当。これは立体映像の異能の奴からの差し入れだ、また今度礼言っとけ」
まさかの谷崎さんからのものだった。
それは今度ちゃんとお礼を言わないと。
『……美味しい』
「これならサプリ飲めんのにな…ところでお前、可愛い顔して食ってくれてんのはいいがまだ気付いてねえか?」
何がですか?と首を傾げると、中也さんに指で指示が出される。
それに合わせて何も考えずに下を向いた。
少しすると顔に一気に熱が集まってきて、恐る恐る布団を被ろうとすれば、その前に中也さんに阻止される。
『な、んでっ…!!』
「キツいだろうからサラシはここで取らせてもらった……安心しろ、こんないい眺めは俺しか見てねえ」
『最ッ低!!!』