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第12章 夏の思い出


部下がいて、相手がそれ程驚異的な強さの者でも無かったのに自分が動こうとしていた。
本来なら拠点に帰すつもりだったのだから、現場にいた部下に任せればよかっただけの事。

私にこんな風にしているからか、いつの間にか甘い人間になりかけてしまっていた。

中也さんはそこまで話して、もう一度私にごめんと言った。

「お前からしてみりゃ、あいつだってお前の敵だったんだもんな。黒だって睨んでたって言ってくれてたのを、俺が無視しちまってたんだ」

『…自分でそこまで分かってくれたんなら、いい……』

「………お前を撃った奴の方はまだ見当が付いてねえ。情けねえんだが、今まだ必死に調べてもらってる最中だ」

三人の秘書さん達には話を聞いている状態で、カイさんは監視体制に置かれているとのこと。
後の二人は通常通りに働いているらしい。

『そう…中也さん、私を撃った人……あれ、多分男の人だよ』

「!…なんでそんな事が?今んところこっちじゃあ、あの三人の内のリクとやらが怪しいと見てたってのに」

『私、鼻良いから。弾丸から火薬の匂いと、後無理やり染み込まされたような香水の匂いがすごくしたの。香水は女の人のものだったんだけどね?』

意識が薄れて切れる直前に、微かに感じた匂い。
どこで嗅いだものだったかも、どんなものだったかももう覚えていない。

けれど確かに、あれは知ってるものだった。

『…男の人の所有物だよ、あの弾。どこで嗅いだのかも誰のものかも覚えてなんてないんだけど、間違いなく会ったことかすれ違ったことがある男の人』

「香水が染み込まされたようなって、んなもんよく分かったな…廃棄されてた狙撃銃はお前んとこの担任が見つけてくれて、広津さんでも知らねえ銃だって事は判明してる」

『!広津さんでも知らない?型番も何も掘られてすらなかったの?』

「ああ、ルートも分からねえし手がかりになるようなものが一つも見つからなくて、何にも調査が進んでねえ。太宰の野郎やあの探偵野郎でも苦戦してやがるが…江戸川とか言ったか。あいつも女のものではねえとだけ割り出してた」

乱歩さんの意見…あの人がめちゃくちゃな事なんて言うわけがない。
私でも分からないようなところを見るような人。

『なら男の人で間違いない、乱歩さんが言うんだから』

「証拠もお前に聞けば分かるって言ってたが……まさか匂いとは」
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