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第12章 夏の思い出


「お前さっき、わざわざ血出すとこまでいったくせして躊躇ってたろ……血なんかどっちだっていいさ。けど、俺んとこには素直に来い。嫉妬でも八つ当たりでも…怖いだけだっていいじゃねえか。強がってねえでちゃんと来い」

『怖い、だけ…?なんで、怖いなんて……』

祭で中也さんから離れた時を思い出す。
怖いだなんて一言だって言っていないし、そんなところまで頭なんて回ってなかった。

そんな事、この人の目の前では一言も…

「急所を避けてたとはいえ、あんなもん誰だって怖いだろ。お前なんか人一倍怖がりなくせしやがって。素直に認めねえってんならすぐに俺はこっから離れ……!…今自覚したってのか」

一言も、言わなかった。
そんな考えが思いつく時点で、どこかで強くそう感じてたってことだ。

祭の空気を壊したくなくて、泣かなかったし弱音だって吐かなかった。
カルマ君にああしてたのだって、一緒にいてほしかったから。

誰に、なんて一々考えなくても分かってる……知ってる…

「悪かった、配慮が全く足りてなくて。探偵社の奴らも全部話したら、口を揃えてやっぱ俺が悪いって言ってたよ。皆お前の性格とか分かってっから、言い出せねえようにさせちまった俺がやっぱり甘かった」

『!ち、違う!!中也さんのせいじゃ…そんな事言わないで…ッ』

「…絶対言うと思った。けどせめて謝らせろ、どっかでお前の強さに甘んじて、ちゃんと見てやれてなかったんだから」

中也さんの体に腕を回して、私も恐る恐ると抱きしめ返す。
暖かくなってる事に安心して、優しくしないでって言ったのに優しくしてくる中也さんがどうしようもなく大好きで、誰のところにも行ってほしくなくって、腕に弱々しくも力が入った。

『……ソラさんとこ、行かないで…っ?口聞かないでとかお仕事一緒にしないでなんて言わない、から…』

「馬鹿、お前そこはそこまで言ったっていいとこなんだぞ?だから我儘にならねえんだよお前のは…あいつはあの後、広津さんと立原に任せてすぐお前を探しに行った。他の奴んところに行くなって言われて俺はお前を怒ったりしねえ、約束する」

『怒らない…?無茶な事言ってたのに……?』

「無茶も何も、椚ヶ丘まで来て狙われてたのは向こうの勝手だろ。お前に接するみてえに心配する癖が付いちまってたが、それが正気に戻っただけだ」

_俺自身が行く必要はねぇんだしな
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