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僕の視線の先に

第4章 虹





「ふぅ。終わった…」




全て片付けも終わり、
城崎学園の演劇部を見送り
ミーティングは、また後日、という事で
帰る事にした。




「ユウスケ先輩、お疲れ様でした!」



新入部員達が、声を揃えて
挨拶してくれた。



何か、頬がくすぐったい。



「あ…うん、お疲れ様。」



もっと気の利いた事
言えたらいーのに。




「また来週。」





みんなを見送り、僕は自転車を押した。






「ユウスケ!」




後ろから声がした。




ジャージ姿のカナだ。





「ユウスケ、今日、城崎学園と発表会だったんでしょ?お疲れ様!」





「あ、うん、でも、僕は演技してないし…」




「何言ってンの。脚本担当で舞台監督やってんでしょ?総まとめなんて、疲れるよ。
面倒くさがりのユウスケが、よくやってるよ。」




「…総まとめなんて。」



ちょっと照れくさい。
確かに面倒だが、結構楽しい。



「脚本も、ぜーんぶユウスケが考えたんでしょ?守山先生が、自慢気に話してたよ。」



「…先生が?カナ、守山先生と繋がりあったっけ。」


3年の担任ではないから、
繋がりはないハズだ。




「ぁあ!そ、そう、仲いい後輩の担任でさ、一緒に話してたら、そういう話になったんだよっ!」



「ふぅ…ん。」




「それよりさ、どんなお話だったの?」




僕は、不思議に思いながらも
自転車を押しながら、
カナとの、
ぶつかりそうな距離感が
何だか、落ち着かなくて、
自転車のハンドルを
握る手に、力が入った。




「ねぇ、ユウスケ、見て!」






カナが、空に向かって
指を指した。





「虹だ。」






一つ向こうの街の先に
山々が連なってる。


その上を大きな大きな
鮮やかな虹が架かっていた。




「キレイだね…」



虹を眺めるカナの顔が
どことなく、さみしそうだった。


先日の、思い詰めた顔を
思い出してしまった。




「…カナ。」




「え…。ユウスケ…?」





気が付いたら、
僕は、カナの手を引き
抱き寄せていた。




「…何かあったの?」







山の向こうの
虹は、消えかかっていた。













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