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僕の視線の先に

第5章 金魚





苦しい。




息を吸うのも吐くのも…。






僕は金魚だ。




縁側に置いてある
金魚鉢の中の金魚。
陽が当たり過ぎて
苦しそうにしてる。






まるで、今の僕だ。












「カナ…。」





梅雨明けの虹を見たあの日から
カナとは話していない。




あの日、そのまま
何も話さないまま、
カナを家に送った。




「バイバイ」




「バイバイ…。」






虹はすっかり消え
薄い夕焼けが見えた。






なんで、抱き寄せてしまったんだろう。





なんで、こんなに切ないんだろう。





面倒な思いだ。










夏休みに入り、
朝の涼しいうちは
縁側で過ごす。


縁側に横たわり、
金魚鉢を見つめる。
僕のぼんやりした顔が映ってた。
金魚が僕に言う。



ー苦しいよー





あんな事しなきゃ良かった。





「カナ…。」




ピロン。


スマホが鳴った。





「8月8日夏祭り同窓会詳細」



カナからのグループトークが来た。






この気持ちのまま
同窓会になんて行けないよ…





ピチッ



金魚鉢の中の金魚が跳ねた。






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