第2章 合縁奇縁
平和島静雄という名前は、世界で一番名前負けしていると思う。
普段は静かだが、怒らせればそれはもう鬼より恐ろしい。
そう影から恐れられている彼は今日もバーテンダーの服を身につけて池袋の街を歩いていた。
そんな彼は、借金の取り立てに行く途中にある拾い物をする。
道のど真ん中に、捨て猫のように蹲っている少女であろう人間。黒に近い紫色のワンピースを着ている髪の長い女の子だった。
周りの人間たちは触らぬ神にたたりなし、と言ったところかちらちらと様子を見るものや野次馬になって小さな群衆ができているくらいだった。
「あ?誰だてめぇ」
だが、このまま放って置くわけにもいかず静雄はその少女に屈んで声をかける。
てか、正直物凄く邪魔だ。通れない。
少しイラつき始めている感情に静雄は必死に耐える。
少女はかけられる声に気がついたのかゆっくりと振り向くと、下手くそな愛想笑いを浮かべて立ち上がろうとした。
その瞬間だ。
「……ぐきゅるるるるる」
「……腹、減ってんのか」
顔を真っ赤にして頭真っ白になってその場に立ち尽くす少女と、一気に怒りの矛を折られた池袋最強の男。
そして、二人の謎に満ちた出会いは幕を開けた。