第2章 合縁奇縁
『放火か……この街も物騒になったな』
「放火は相当厳しい罪に値するからね。人を殺そうものなら、死刑も免れないかも」
隣のソファーで一緒にニュースを見ていた神羅が答える。
『なぁ……このマンションは燃えないよな?』
「さぁ……放火魔のターゲットにならないように祈るしかないよ」
セルティは予想のできない危険に身を小さく震わせた。
「でも、僕らのマンションが燃やされたとしても僕はセルティと一緒なら場所は選ばないよ。例え三界無安の中でも君とならいつでも幸せさ」
『私はこの場所を気に入っているんだ。神羅がよくても私は嫌だ』
「ああ、セルティ。なんということだ。君に愛されるこの場所が憎く感じられてしまうよ。まさかこの僕がマンションという無機物にまで劣情を抱かなければならなくなるなんて!正に艱難辛苦の想いだよ!」
『うるさい』
未だにマンションのコンクリートに対して訳のわからない勝負を挑んでいる変な恋人は置いといて、セルティはシャワーを浴びに風呂間に向かった。
私だけではなく神羅とも住んでいるマンションを燃やされたら絶対に許さないからな。
と、誰に言うでもない脅しを頭の中で叫びながら今日の夜も更けてゆくのだった。