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占い師の憂鬱【デュラララ‼︎】

第1章 慇懃無礼


さて、どうしたものか。
この目の前の二人に本当のことを伝えてしまえば最悪狂って刺し殺されかねない。世界の中に彼女という存在はいないために彼女は自分という人間の未来を知る手段を持たない。
だが、自分にとってはそんな事などどうでもよかった。
目の前では今もなお能天気に言葉を交わすカップルがいる。
私は、こう答えるだろう。
「あなた方の未来は、あなたがたの心のうちにあるべきです。占いをせずとも、今の幸福を信じていればよいのですよ。未来など、知る必要はありません。お代は必要ありません。どうか、お幸せに」
「えぇー、いいじゃない渋ってないで占いなさいよぉ。金なら払ってあげるんだから!」
ああ、やめておいた方がいいのに。
次で、私は言わざるを得なくなってしまう。そう、それが必然だから。
「後悔なさらないように。……あなたの彼氏は、あなたの知らない所で沢山の女の方と逢瀬を重ねております。それを貴方は今ここで知るでしょう。そして一ヶ月後、貴方は彼と別れざるを得なくなります」
そう告げた途端に、彼氏の方は顔色を真っ青にして弁解にもならない弁解をまくし立てた。
「な、何デタラメを言っているんだ!」
「ゆーくん!本当なの!?」
「そんなわけがないだろう?この女が嘘をついているんだ!俺がお前を裏切るわけがないじゃないか。愛しているよ」
「ああ、そうよね。ゆーくん、私も愛しているわ」
「けっ、金なんざ頼まれても払うかよ!もう二度と来るもんか!」
「最低の詐欺師ね!ゆーくんとの愛は邪魔させないんだから!」
そう言い残して二人の男女は布を勢いよく翻らせて賑やかな喧騒へと去っていった。
残された少女は一人ため息をつく。
「はぁ……それを一ヶ月後に知ることになるのに。彼の浮気相手と出会う事になるんだから」
人間は、なぜ未来を知りたがるのだろう。己の未来を殺してまで。
己の未来すらも持たない少女には、不思議でならなかった。
「ごめんください」
そして、次の罪人がやってくる。
「ようこそ。必然との出会いを心から祝福します」
めい一杯の皮肉を込めながら、彼女は笑顔を作った。
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