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占い師の憂鬱【デュラララ‼︎】

第1章 慇懃無礼


未来予知。

形だけ聞けば、それはテレビで見る超能力者やゲームでのキーマンに用いられるような格好のいいイメージがつくかもしれない。

だが、それはただの幻想に過ぎない。

未来を予知するという者は、己の未来というものを持たない者のことを言う。
知り得ない、測り得ないことこそを未来と言うのであり、そうでないものは未来とは言わないだろう。
なら、なんと呼ぶか。
ああ、必然と呼ぶのだろう。
完全なる未来予知とは、物語のネタバレをするかの如く非常に無遠慮であり悪質なものだ。
少女は、それを自覚していた。
だが、少女にとって唯一占えない未来があった。
それは、己の未来だ。
それはきっと、物語が自分を排除したから。物語の中に自分という存在が消えたから、少女には綴られるべき未来が存在し得なかったのだろう。
それは、少女が世界から拒絶されたことを意味していた。
薄暗い帳が敷かれた中で、あからさまな衣装を身につけあからさまな水晶が机に置かれた室内。目の前には、付き合いたてのカップルが座っていた。
「初めましてぇ、今日は彼氏との相性を占って欲しくってぇ。私たちラブラブだから占う必要もないってくらいなんですけれどぉ、でも、やっぱりしりたくなるじゃないですかぁ。ねぇ、ゆーくん」
「そうだね、君の様な美しい女性と付き合っているだけでも僕は幸せだけれど、叶うことなら未来を約束された仲になりたいからね」
「お二人の未来の姿を占うのですね。承りました」
私はいつも、物語にとって邪魔者だ。
そして、物語で自由に動く彼らがなぜわざわざ自ら己の未来を失おうとするのかが少女は理解ができなかった。
少女は、何も映し出される訳のない水晶玉を見つめてぼんやりと頭を宙に漂わせる。それは、物語の外へ出る行為の準備だった。
ページがめくられる音が耳に響き、様々な文字が勢いよく刻み付けられてゆく。
ああ、知ってしまった。

彼らの未来は、最悪だ。
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