第2章 合縁奇縁
「……殺す」
自分は、踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまったのかもしれない。必死に拙い言葉であわあわと弁解をする。
「いえ、すみませんわざとではないんです……えっと、馴れ馴れしいですよね。すみません、ご気分を害していましたらごめんなさい」
「いや……いい」
必死で怒りをなんとかすんでのところで抑えた。
今怒ったらこの少女に実害が及びかねない。そんなことはごめんだ。
対する少女は、この男にある種の使命感を覚え始めていた。
知らなければ、この人の事を。
この人がいつ悲しい顔をするのか嬉しい顔をするのか怒った顔をするのか。
私は、人の中でしか生きられない存在だから。
だから、知らなければ。
自分が生きるであろう場所のことを。
丁度三分が経ち、カップラーメンを二人同時に啜る音が小さな部屋に響き渡る。
人と食べる食事は、今までのやたら高級な食事のどれよりも美味しかったように感じた。
食事が終わりに差し掛かり、とうの前に食べ終えた静雄が片付けをして戻ってきた時彼が問いかけた言葉。
「で、手前が止めたいってのはどんな奴なんだ?」
重い口を、ゆっくりと開く。
「……幼馴染で、私の、唯一の友達で……今は、放火をして回っている人です」