第2章 人の顔と名前って大体一致しないことが多い
黒髪の男の人がその目を見開く。
その反応に、先ほどから疑問に感じていたことをふと尋ねてみることにした。
「あの、さっきから不思議だったんですが……皆さんは私のことを知っているんですか?」
確かに、初対面だという気はしなかったが。
「知ってるも何も……」
三人は混乱しているのかとまっどっているのか多分両方とも言える顔つきでお互いの顔を合わせていた。
何かまずいことでも聞いてしまったかな。
「あ、いえ、話したくない話題だったらいいんです」
「なぁ、一つだけ聞いてもいいか。お前の名前はなんていうんだ」
「私は……楓。朝霧 楓といいます。すみません、お世話になっているのに自己紹介が遅れてしまって」
「……いや、いいんだ。これでやっとわかった」
何が、分かったと言うのだろう。三人とも先ほどの疑念が確信に変わったかのように。
「おかえり、楓さん」
近藤さんが、寂しそうでだけどほんの少しの安堵を含んだ顔でそう言ってくる。
まるで、自分の本来の居場所がここだったとでもいうかのように。
心が、自然と酷く締め付けられた。