第8章 下着屋の前で携帯は開くな
「でも、俺のことも覚えていない奴ですぜ?」
「覚えていない……ね。ま、そのうち思い出したりすんじゃねぇの?」
「んな適当な……」
「そういうもんさ。女ってのは大概面倒くさくて男にゃさっぱり分かんねぇ軸で動いてやがる。だからこそ、適当に構えてるくらいがちょうどいいと思うぜ?」
「そういうもん、ねィ……」
案外、的を射ているかもしれない。
記憶喪失がどうとか話そうと思ったが、やめた。
そんな難しいことなんて本当は必要がないことくらい、知っていたんじゃないのか。
こんなちゃらんぽらんの話でもよくよく聞いてみるもんだ。
「なんか今すっげー失礼なこと考えなかった?」
「自意識過剰ですぜ旦那ァ」
「ふーん、まぁいいけどね。パフェで許してやるよ」
今はまだ、そんな覚悟すぐにはできないかもしれないけれど。
隣にいることくらいは、許してくれてもいいだろ?