第2章 人の顔と名前って大体一致しないことが多い
「総ちゃん、総ちゃん。どこ?」
ああ、また小さい背中が必死に俺の名前を呼んでいる。
「ねぇ、どこいったの?総ちゃん。唐揚げできてるよ?コロッケもちゃんとつくったよ?」
出て行きたいけれど、簡単に出て行ってしまったらつまらない。このまま様子を見てやるよ。
本当はもう、怒りなんて全然覚えていない。けれど、楓の困って俺を求める顔を見たかった。
「やだよ、総ちゃん。置いてかないで、総ちゃん」
あれ、おかしい。
なんで泣いているんだ。
俺、そんなに悪いことしたか。
「総ちゃん、総ちゃん、嫌だよ。行かないで、一人にしないで、置いていかないで」
俺が見たかったのはそんな泣き顔じゃねぇ。
違うんだ。
そんな顔を見るためにこんなことをしたわけじゃない。
ごめん、俺が悪かった。
もう一人にしないから。
だから、もうそんな顔で泣かないでくれ。