第8章 下着屋の前で携帯は開くな
女の買い物に男が首突っ込むのも野暮だ。俺は、楓とひとまず別行動をとることとなり歌舞伎町をあてもなくぶらぶらと歩いていた。
夕方で丁度飯時か混雑気味の道で、男の肩とぶつかってしまう。
「いてっ」
「あ、すいやせ……って、旦那じゃねぇですかィ」
その主を伺い見ればいつぞやの近藤さんとの一件以来目をつけている万事屋の旦那、坂田銀時がそこにいた。
俺は案外、この男が嫌いではない。
ちゃらんぽらんといつも適当で何を考えてるのか分からないこの男。だが、その実俺でも測れない様な何かを持っている気がする。その何かが、何故だか心惹かれるもののように感じていた。
ま、土方さんがやたら敵視しているってのもあるけど。
「あらら、総一郎君じゃないの。こんにちはー。仕事はどうした?またサボり?」
「総悟でさァ。旦那と一緒にしないでくれやせんか。慈善警護ですよ慈善警護」
「そりゃ警察も暇なこった。あ、そうそう総一郎くーん……あのぉ、競馬で負けちゃってさぁ……金貸してくんね?」
「……仕事で忙しいんで失礼しまさァ」
「あああちょっと待って!!分かったから!!分かったから総悟くんんんん!!お願い、銀さんからの一生のお願い!今糖分足りなくて死にそうなんだよ、助けてぇぇぇぇ」
「………」
この男は、本当はただのちゃらんぽらんなのかもしれない。
自分よりも遥かに歳下の俺に金をたかるとか、ありえねぇ。面白いからいいけど。
とりあえず、金は貸さないがパフェなら奢ってやることにした。
気分だ、気分。
俺だってたまには慈善事業をしたくなるときだってある。