第7章 引越しは駅から近い所にしろ
それから、俺たちは着物店についた。
並べられる様々な模様のついた着物を目にして楓は予想通りにものすごく悩んでいた。しってるよ、優柔不断だって。
「何やってんでィ、馬鹿。早く決めろ馬鹿」
「もう、馬鹿馬鹿煩いですよ!!だってどの着物がいいのかさっぱり分からないんです……あの、あまり目立たなくてそれでいて私に似合う奴ってどれだと思います?」
「一つもねぇな」
「どういう意味ですか!!」
「……」
ふて腐れる楓をよそにあたりを見回す。隊内で着るものであれば勿論露出は控える方向であまり派手な模様もないものがいいだろう。
それに、身軽で簡単に着れるもの。
楓に、似合う着物。
そして、俺の好きな着物。
少し明るめの薄いオレンジと白のグラデーションがかかった着物が目に入る。
今の彼岸花を象った真っ赤の悪趣味な着物よりもずっと清楚で、快活として楓にぴったりだと思った。
「あれなら、ギリギリ馬鹿でも見れるくらいにはなるんじゃねぇかィ?」
「?……わぁ、綺麗!!」
楓は凄く嬉しそうにその着物の元に寄ると、それをじいと見つめた後時間も置かずに決めた。
「店員さん、これください!」
まさかの即決定に驚く。
いや、普段の優柔不断どこいった。
すっかりほくほくの買い物を終えて楓が戻ってくると、俺の顔を伺うかのように覗き込んできた。
「何でィ」
「……いえ、嫌々言いながらもちゃんと見繕ってくれたんですね……その……」
「……別にあれは」
「ありがとうございます」
「……」
こいつのお礼は苦手だ。
覗き込まれていることに耐えられなくて顔を反らす。