第6章 仲直りのごめんねって中々言い出せない
トシが後ろで呟く。
「あいつは喧嘩までして一体何がしたいんだか」
「総悟もまだまだ子供だったということだ」
そう近藤が言うと土方さんは呆れたようにタバコを吹かした。
「まぁ、それにしても……あの時頭下げられるとは思わなかったぜ。俺ぁ楓をここに置くつもりなんざ更々なかったんだがな」
あの時、頭を下げだ総悟の顔を思い出す。そこには昔の過ちを繰り返してはならない覚悟のようなものが垣間見えた。
あんなに毛嫌いしていたトシにまで頭を下げて。
それほどまでに、楓さんを護りたかったんだろうと思うと自然と頬が緩む。
「総悟もこれで少しは素直になってくれるといいんだがな」
「いや、あいつは無理だろ。わざわざ自分でここに置いたのに、昔のこと引きずって意地になって楓に冷たく当たってるようじゃ、素直になるには程遠いぜ」
「いや、そうでもないかもしれないぞ」
俺は、あんな総悟を初めて見た。
あんな何かを心に決めて護りたいと強く秘めた瞳を。
今はまだ、急激すぎる変化に気持ちがついていけていないだけだろう。
素直になれないのは楓も同じようで、要はお互い様だ。
この関係も時間とともにだんだんと溶かされていくだろう。その時に残る二人の姿を今から見たくて仕方がない。