第6章 仲直りのごめんねって中々言い出せない
ふと、大変な事に気がついてしまった。
「あれ、私……」
生活必需品を自分は全く持っていなかったということに。
ここはあろうことか男所帯であり、女性としての日々の嗜みに気を使う道具など置いてあるはずもなかった。しかし、無いのは本当に困る。
言えば、着替えすらまともにない。
今までは何とか女中さんたちが厚意で調達してくれた下着でやり過ごしていた。そのサイズが余り合わなかったのも仕方がないが、こう激務だと流石に合わない下着で動き回るのは困難だ。
それに、この赤い着物もボロボロだし酷く目立つ。
そんなこんなの事を近藤さんに相談してみれば、快くその為の資金を貸してくれた。
「あの、ごめんなさいこんなに良くしていただいて……」
「いやいや、気にしなくてもいい。あ、それとそんなかしこまった話し方をしなくてもいいからな」
「でも……」
「それに、そっちの方が総悟も喜ぶだろう」
沖田さん、か。
結局喧嘩したまま話をしていないな。
確かに沖田さんが悪いと思うし、私が怒っているのが間違いではないと思う。
けど、酷い言い方をしてしまった。
あの時一緒に頼み込んでくれた沖田さん。
そのお礼だってまだ返せていないのに、喧嘩をしたままなんて失礼過ぎるんじゃないだろうか。
そんなことをうだうだと悩んでいれば近藤さんが察してくれたらしい。