第6章 仲直りのごめんねって中々言い出せない
二人が喧嘩した翌日。
楓はせっせと洗濯物を干していた。
沖田さんに話しかければことごとく無視をされあからさまに避けられた。
子供か。と怒ってやりたかったが変な面倒を起こしてみんなに迷惑をかけるわけにもいかない。
それに、私はといえば女中の仕事に身をやつしていて沖田隊長の事なんて考える余裕もなかった。
毎朝毎朝大量のご飯を炊き、大量の服を洗い、大量のゴミの掃除をする。
奴隷として扱われていた日々では、働く人数は多かったためにこれよりかは仕事量は少なかった。
だが、これじゃ休む暇もない。
ようやく貰った休憩時間に、一息つく。
することがなくなれば、頭の中は色々と考えたくないことまで考えようとしてしまう。
何で沖田さんは、支えたのをわざと落としたり、奴で追いかけ回したり。そんな意地悪ばかりをしてくるのだろう。
目覚めた最初の頃は口が悪かったけれど凄く優しかったのに。
だんだんと人が変わったかのように気がつかぬ間に壁を作られてしまっているように感じる。
私が、前とは違うから。
それに、失望してしまったんだろうか。
だとしたら、なんて虚しいことだろう。
必死に泣きそうになる顔を引き締める。
ここに居られるのは沖田さんが頼んでくれたおかげ。それは重々承知している。もしも私が記憶を戻すことができたら、きっとこんなに冷たく当たられることもなくなるのかもしれない。
でも、今の私は過去の私になんてなれない。
届かない距離に、胸が苦しくなる。
近くにいるのに酷く遠い人が、いつか本当に離れてしまうのではないのかと恐ろしくなって。
謝ってしまおうかとも思った。
いっそのことこっちから謝れば、許してくれるのだろうか。
でも、そうしたって作られた壁が治るわけでもない。
溜息をついて、空を見上げる。