第4章 道案内で道を間違えられることがあるから気をつけろ
「本当ですか!?ありがとうございます!あの……お名前を伺っていなかったんですが、なんとお呼びしたらよろしいでしょうか?」
「俺は、監察課の山崎 退。好きなように読んでいいよ、朝霧楓さん」
「私の名前を知ってるんですか?」
「うん、君のことは上司から聞いてるから。そうだなぁ……君の世話係になったからこれから色々会うこともあるかもしれないけれど宜しく頼むよ」
そう言ってはにかめば、数倍の笑顔と快活な声で返ってくる。
あー、天然たらしだ。この子。
「はい!えっと……じゃあ山崎さんって呼ばせていただきますね。私のことは楓とでもお呼びください!
「いや、俺も楓さんってところで。そんな呼び捨てで呼んじゃうと誰かに殺されるかもしれないし」
「殺されるって、誰に?」
「いや、こっちの話」
「……?」
未だに納得しきれない楓さんは申し訳ないけれどスルーして、珍しい女の子のお客さんに隊士からの視線の突き刺さる中、新選組の説明をした。
風呂場の使い方や、部屋割り、隊の構成など知っておいてもらわないと困るであろう事項を丁寧に説明していく。楓さんは非常に真面目に聞いてくれていた。
正直、ここまでまともな女の子がこんな変人奇人変態暴虐武人の中に突っ込まれて生きていけるとは思えなかった。
心の中で軽い同情を覚える。