第4章 道案内で道を間違えられることがあるから気をつけろ
その後、俺は沖田隊長の殺気に耐えかねて逃げるかのように楓さんの護衛に回ることにした。
今のあの人のそばにいると命がいくつあっても足りない。
「いてっ」
「きゃっ…」
通りを曲がろうとした時、誰かにぶつかってしまった。
慌ててその人に頭を下げてその顔を覗き見ればその途端に体が固まった。
「君……」
「あ、ごめんなさい!私、ここの道とかよく分からなかったものでして……宜しければ、その……女中さん方が働いているという場所に連れて行っていただけませんか?」
その活発そうな表情とは裏腹に何故か何かを悟った。
さっきまで病人で辛い過去とか経験してきた子だよね本当に。
沖田隊長の勘が当たった。
この子、人に言われる前に自分で何でも行動しちゃう、無鉄砲と言えば無鉄砲な子なんだな。
昔の記憶を失っていて、初めての場所で少し身の狭い思いをしているのかと思えばなんて強かな。まさか道もわからない場所で自分の仕事を探すために動けるとは思わなかった。
「いや、その前にここの道順とか、それに浴場とか鍛錬場とか。知っとかないと困るでしょ?案内してあげるよ」
そう言えば艶やかな髪を翻して満面の笑みでお礼を返してくる。
その幼顔はまるで天使のように可愛らしくて。
駄目だ駄目だ。
必死に心の中に生まれる邪念を振り払う。今こんな変なこと思ったら絶対に殺される。
誰にって。
そりゃもう言うまでもない。