第4章 道案内で道を間違えられることがあるから気をつけろ
「そうだな……女中の仕事は同じ仲間に教えてもらっても別に問題ねぇだろ。総悟は少し過保護すぎだ」
立案元は沖田隊長か。
「ですがねィ、土方さん」
「まぁ、いくら記憶がないとしても楓さんなら大丈夫だろう。山崎くんもそばにいることだしな!」
なんだろうこの悪意なきプレッシャーは。
いや、悪意なんてあってもなくても漂う威圧感で胃に穴が開きそうなのは変わらない。
今日のあんぱん腹に入るかな。
「……ていうか、そんなに心配ならお側に居てあげればいいじゃないですか。副長や局長はまだしも沖田隊長は案内する時間くらい作ればあるでしょうに」
そう問うと、沖田隊長はばつが悪そうに顔を背ける。
あれ、珍しい事もあるもんだな。
「……あいつとは長い時間いるとこっちが困るんでィ」
「……?」
沖田隊長が考えていることはよく分からない。他の二人よりも物凄く似合わないことに楓さんの事を心配しているみたいで、それでさえ異常事態なのに、この上逆に変な距離をとりたがっている。
乙女心は気難しいと聞くが男心も大概察し難い。
「あ、もしかして沖田隊長……楓さんに惚れ」
「山崎……次言ってみろ。てめぇ冗談抜きで殺してやるぜィ」
「ヒィィィィィイ!!」
やばいやばい。
当たってる。
そりゃ何かってアレだよおめぇ、銀色に輝く真剣が首元に刺さりかけてるんだよ。
あれ、今日死ぬの俺じゃね。